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227 ラートシカムイ
ラートシカムイという妖怪がおります。
これは石狩湾に棲んでいたという巨大な蛸で、アイヌに次のような話が伝わっています。
その昔。
巨鳥のフリカムイが荒れ狂って海上を飛びまわったとき、その騒がしさに怒ったラートシカムイがフリカムイを黙らせようとしました。
ラートシカムイはフリカムイに墨を吐きかけ、8本の足で海に引き込みましたが、両者互角で決着がつきませんでした。
フリカムイが海中に引き込まれた際、尾羽《アイヌ語でイシ》を左右に開いて《アイヌ語でカリ》ふんばったことから、付近の海は《イシカリ》と呼ばれるようになったといいます。
フリカムイのフンバッタ姿を見て、ラートシカムイが問います。
「フンした?」
・フンした=フンバッタ=糞ばった
 




