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226 手形傘
手形傘は伝説の一種です。
山梨県甲府市の一蓮寺に伝えられる長柄の傘で、かつて甲府勤番士であった野田成方の『裏見寒話』に次のような話が記されています。
その昔。
一蓮寺で葬式が行われていた際、すさまじい雷鳴が轟き、雲の中から毛だらけの大きな手が出て、和尚に掴みかかりました。
和尚は逆にその手を掴んで引きずり下ろすと、怪物を組み伏せました。
命乞いをする怪物に和尚は、「寺や檀家を嵐や雷で襲ったりしないと誓うなら許してやる。約束として、墨を掌につけて日傘に手形を押せ」と硯箱を渡しました。
怪物は日傘に手形を押しました。
それ以来。
怪物が雷を落とすことはなかったといいます。
この怪物。
一蓮寺の和尚の手に落ちました。
・手に落ちる=その支配下に入る
・野田成方(のだしげかた・甲府勤番士)
・『裏見寒話』(うらみかんわ・1752年成立・地誌)
 




