223/922
223 教え舌
教え舌は怪異の一種で、鎌倉時代後期、作者不詳の仏教説話集『撰集抄』に次のような話があります。
その昔。
陸奥国平泉郡の坂芝山に住んでいた娘は、法華経を読みたいと望むも、これを教える者がなく、朝夕嘆きながら過ごしていました。
ある日。
家の天井より何者かが語りかけてきます。
「経典を手に入れて面前に置きなさい。私がここで教えてやろう」
娘は怪しいと思いながらも経典を手に入れ、天井の声に導かれ、法華経をすっかり覚えました。
娘はいよいよ不思議だと思って天井裏を探ると、そこには髑髏があり、舌だけが生前のままに残っていました。
娘は髑髏にたずねました。
「あなたがしていたことだったの?」
「ああ、わしがシタ」
・シタ=舌=した(やった)
・『撰集抄』(作者不詳・仏教説話集)




