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222 花咲石
花咲石は怪異の一種です。
これは群馬県利根郡片品村に「花咲石明神」として祀られてあり、次のような話が伝わっています。
その昔。
ヤマトタケルノミコトが保鷹山の悪勢と戦になったとき、悪勢の砦を囲んで火を放ちました。
悪勢は妻子を抜け穴から逃がしたのですが、火の手が出口にもまわってしまい、妻は大火傷を負ってしまいました。
翌朝。
妻の体は大きな薄紅色の石となり、その石は花が咲いたように見えたといいます。
その後。
村では疫病が流行り多くの人々が倒れました。
村人たちは悪勢の妻の祟りだと恐れ、その石のかたわらを通る者は黙って、見ぬふりをして通り過ぎたといわれています。
この花咲石。
言わぬが花でした。
・言わぬが花=口に出して言わないほうが味わいもあり、差し障りもなくてよい
・悪勢=群馬県利根郡武蔵山を根城にしていた鬼




