220/942
220 硯の魂
硯の魂という妖怪がおります。
これは硯の精とも呼ばれ、江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『今昔百鬼拾遺』にあり、墨をする硯の上に小さな武士たちが多く描かれています。
その解説文。
「赤間ヶ関産の石硯を文具として愛用していた者が平家物語を読みながらまどろんでいると、硯の中に海が現れ、やがて源平の合戦のようなありさまになったという」
これは徐玄之が夜中に読書をしている最中に、米粒大の甲冑をつけた数百の人物を硯の上に見たという説話をもとに作ったものだと見られています。
赤間ヶ関というのは硯の産地であり、また源平合戦の平家の終焉の地だったといわれています。
この硯の魂。
硯のスミズミにいました。
・スミズミ=墨=隅々
・甲冑=胴部を守る鎧と頭部を守る兜からなる武具
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『今昔百鬼拾遺』(こんじゃくひゃっきしゅうい)




