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22 わいら1
わいらという妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『図画百鬼夜行』にあり、巨大な牛のような体に、前足に鋭いカギ爪が1本ずつ生えた姿で描かれています。
これは山奥に棲み、前足の爪で土を掘り返し、モグラなどの小動物を餌にしていました。
このわいらの爪。
香にして焚くと、甘いいい香りがしたといいます。
ある日。
木こりの男が山中でわいらに遭遇しました。
必死に土を掘り返しているところからして、どうやら餌とするモグラを捕まえているようでした。
ついにモグラが穴から顔を出し、わいらはそれに飛びつきました。
ところがすんでのところで、モグラに逃げられてしまいました。
このわいら。
ツメが甘かったのです。
・ツメ=爪=詰め
・詰めが甘い=最後の最後でへまをする
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『図画百鬼夜行』(がずひゃっきやこう)




