210/925
210 どうさい
どうさいという妖怪がおります。
岐阜県高山市に伝承があり、この地方ではヒキガエルの蝦蟇のことをいいます。
蝦蟇は皮膚が硬いため大きくなれませんが、人の手で皮をはいでやるとその度に大きくなり、それを七年繰り返せばどうさいになったといわれています。
その昔。
猟師の山小屋に美しい女が現れ、糸車で木綿糸を引くので、猟師はこれを怪しんで鉄砲で撃ちました。
ところが弾が1発も当りません。
そこで猟師が怪しく光る行灯を撃ったところ、ようやく女は倒れました。
翌朝。
山小屋には3尺もある蝦蟇が死んでいて、銃弾は蝦蟇の目に当たっていました。
このどうさい。
美しい女から目も当てられない姿となりました。
・目も当てられない=銃弾は蝦蟇の目に当たって
・目も当てられない=あまりにひどすぎて見るに堪えない
・行灯=ろうそくや油脂を燃料とした炎を光源とする照明器具
 




