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206 天狗礫1
天狗礫は怪異の一種です。
これに遭遇すると、小石が突然空から降ってきたといい、東京絵入新聞に次のような記事が載りました。
「明治9年3月某日。
中村繁次郎という者の家で小石が降るようになった。
繁次郎はこれを警察に届け、巡査の目の前でも小石が降る怪異は起きた。
天狗礫の噂が広まって、繁次郎宅には大勢の見物人が押し寄せるようになった。
そんななか小林長永という人力車夫が現れ、自分が狐狸を追い払う祈祷を行い、それで効果がなければ専門の先生を紹介すると申し出た。
繁次郎はこれに喜んで同意した」
ちなみにこの祈祷の結果については、その後の東京絵入新聞には載りませんでした。
以後、ナシノツブテです。
・ナシノツブテ=礫
・なしの礫=音沙汰のないこと
・明治九年=1876年




