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205 うそ峠
うそ越は天草の民俗学者、濱田隆一著『天草島民俗誌』に次のような話があります。
その昔。
天草諸島下島の一町田の村にうそ越という峠があり、ここは昔から物騒な所でした。
あるとき、二人連れの男がその峠道を通っていました。
一人がこの峠について話しました。
「昔ここで、血まみれの手が落ちてきたそうだ」
すると「今もー」と声がして、血まみれの真っ赤な手が落ちてきました。
二人連れはびっくりして逃げました。
ちょっと落ち着いたところで、男がまた話します。
「ここでは血まみれの生首が落ちてきたそうだ」
すると「今もー」と再び声がして、今度は血まみれの真っ赤な生首が転がり落ちてきました。
このうそ越の話。
真っ赤なウソでした。
・ウソ=うそ峠
・濱田隆一=民俗学の草分け期に活躍した民俗学者
・『天草島民俗誌』(1932刊行)




