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2 食わず女房
食わず女房という妖怪がおります。
日本各地に伝承があり、これは後頭部にも口があって、それは長い髪の下に隠されていました。
その昔。
ある男の家に一人の旅の女が訪れ、一晩泊めてほしいと願い出ました。
女は飯をまったく食べず、しかも働き者であったので、男は女を気に入って女房にしました。
その後。
女房は飯を食わないはずなのに、食べ物の減り具合が以前に比べ早くなり、それを奇妙に思った男は屋根裏から女房を見張りました。
女房が髪結いをほどきます。
すると長い髪の下から口が現れ、その口で飯を食べ始めました。
「化け物!」
男はつい声をあげていました。
翌日。
男の姿はどこにもなく、カミ隠しにあったのだといわれました。
・カミ隠し=神隠し=髪隠し
・神隠し=子供や娘などが突然行方不明になる