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199 化け草履1
化け草履という妖怪がおります。
古くなった草履が長い年月を経て付喪神となったもので、手と足は藁でできていました。
その誕生は古く、室町時代の妖怪絵巻『百鬼夜行絵巻』にはすでに、藁の手足を持つ藁草履の妖怪が藁の甲冑を身にまとい、トカゲ状の馬にまたがっている姿が描かれています。
江戸時代後期には、多くの履物が擬人化されて描かれ、おもちゃ絵や黄表紙をはじめとした草双紙に登場しており、十返舎一九による黄表紙『運次第出雲縁組』には、雪駄の夜鷹が化け草履に声をかける場面があります。
「あんた草履なの? 草鞋なの?」
「どっちもだ」
この化け草履。
二足のワラジを履いていました。
・ワラジ=草鞋
・二足の草鞋を履く=同一人が両立できない二つの職種を兼ねる
・十返舎一九(じっぺんしゃ いっく・1765~1831・戯作者、絵師)
・『運次第出雲縁組』(うんしだいいずものえんぐみ)




