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197 タテクリカエシ1
タテクリカエシという妖怪がおります。
高知県幡多郡に伝承があり、餅をつく杵が年を経て付喪神となったものだといわれています。
夜道を歩いていると、道の反対側からスットン、スットンと音を立てながら道を転がってきて、出遭いがしらに人を転ばせて喜びました。
タテクリカエシは猪と同じで、急な方向転換ができないため、遭遇した際には寸前で脇に身をかわせばよいといわれています。
ある晩。
スットン、スットン……。
タテクリカエシはいつものように餅をつく音を立てながら、道行く人にぶつかっていきました。
ひょいっ!
通行人が見事に身をかわします。
スットン!
このタテクリカエシ。
勢いあまって尻モチをつきました。
・尻モチ=餅をつく




