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195 垢嘗
垢嘗という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』にあり、舌を出した童子姿で描かれています。
垢嘗は長い舌を使って、風呂桶などに溜まった垢をなめ取って食べました。
某風呂屋。
そこに新たな垢嘗が棲みつきました。
ある夜。
垢嘗が風呂桶の垢をなめておりますと、この風呂屋の主人がやってきました。
主人は奇妙な童子に声をかけました。
「だれだ!」
「垢嘗という妖です」
「ならちょうどいい。毎晩ここに来て、風呂桶をなめてきれいにしてくれんか?」
「お高くつきますよ」
「なんだ、子供なのに金を取るのか?」
「はい、これでもいっぱしの垢嘗ですので」
「ずいぶんとナメたやつだな」
・ナメる=嘗る=相手を侮って甘く見る
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『図画百鬼夜行』(がずひゃっきやこう)




