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193 文車妖妃
文車妖妃という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』にあり、般若のような顔をした女が、手にした巻紙を読んでいる姿が描かれています。
ちなみに文車とは、内裏や寺院、公家の邸宅などで使われていた書物を運ぶ車で、失火などの非常時用として備えられていたものでした。
石燕は解説文で「執着の思ひをこめし、千束のたまづさには、かかるあやしきかたちをもあらはしぬべしと……」と記しており、古い恋文にこもった怨念や情念などが化身した妖怪だとしています。
この妖怪は言葉巧みに、ほかの多くの妖怪たちをだましたといわれています。
この文車妖妃。
口車に乗せるのが巧みでした。
・口車=文車
・口車に乗せる=巧みな話術で言いくるめてだます
・内裏=古代都城の宮城における天皇の私的区域
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)




