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184 物岩
物岩は怪異の一種です。
長野県北安曇郡小谷村には、物岩といわれる大きな岩があり、次のような話が伝わっています。
その昔。
山岸七兵衛というよく訴訟を起こす男がいました。
ある日、そんな七兵衛のことを恨んだ者が、憑き物の管狐を使って七兵衛を呪い殺そうと、憑き筋の家に誘い出しました。
その道中。
七兵衛が大きな岩の前を通りかかったときです。
「今夜行ったら殺されるぞ」
誰もいないはずの岩から声がしました。
七兵衛は不気味に思い、この夜はその声に従って家に引き返しました。
後日、
結局、七兵衛は殺されてしまいました。
その日は別の道を通ったため、物岩の声を聞くことがなかったのです。
モノイワナカッタのでした。
・モノイワナカッタ=物岩なかった=もの言わなかった




