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173 ぼうずがっぱ
ぼうずがっぱという妖怪がおります。
ぼうずがっぱは雨の降る日に限って見かけられたといい、江戸時代後期、滝沢馬琴の黄表紙『阴兼阳珍紋図彙』に次のような話があります。
ぼうずがっぱはのっぺらとして両腕がなく、その影は火の見櫓のようでした。
雨の降る日。
このぼうずがっぱに行き遭う者は珍しくなく、ぼうずがっぱの屁を嗅いだことのある者によれば、それはたいそう油臭いものだったといいます。
またぼうずがっぱは、狸や狐のように人を化かすことはなく、ただ雨の日になると、いそいそと外を出歩くのみでした。
このぼうずがっぱ。
天気の良い晴れた日は、決して外を出歩くことはありませんでした。
元は雨ガッパなのでした。
・カッパ=河童=合羽
・滝沢馬琴(たきざわばきん・1767~1848・読本作者)
・『阴兼阳珍紋図彙』(かげとひなたちんもんずい・黄表紙)




