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160 うわん
うわんという妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』にあり、両腕を振り上げた三本指の男が描かれています。
うわんは古寺などに現れて、人が通りかかると「うわん」と奇声をあげ、その者が驚いたすきに襲いかかるとされています。
月のない夜。
ある豪胆な男が提灯を下げ、古びた寺の前を通りかかったときのことでした。
道端の暗がりから「うわん!」と声がして、何者かが男の前に飛び出しました。
うわんです。
うわんは腕を振り上げ、男に向かって襲いかかりました。
「さわんな」
男がうわんの腕を払いのけます。
するとうわんは、右手の三本指を大きく振りかざして見せました。
「うわん!」
「サワンな」
「ウワン!」
・ウワン=うわん=右腕
・サワンな=さわるな=左腕な
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『図画百鬼夜行』(がずひゃっきやこう)




