153/921
153 猫股の火
猫股の火は新潟県に伝わる怪火です。
これは江戸時代中期の怪談集『大和怪異記』に次のような話があります。
その昔。
越後国の某武家の家では、毎晩のように正体不明の火の玉が出没していました。
大きさは手毬ほどで、寝ている家人の部屋に入り込むこともあり、やがて無人の部屋で物がひとりでに動いたり、寝ている者の姿勢が逆さまになるようになりました。
ある日の夜。
主人が庭に出たところ、老いた猫が頭に赤い布をかぶって立っていました。
主人はこれを怪しみ、弓矢を取って返し、その猫を射止めると、それは五尺もの大きさで、尾は二つに分かれていました。
それ以来。
猫股の火が現れることはなかったといいます。
オワカレでした。
・オワカレ=尾が分かれ=お別れ
・『大和怪異記』(作者不詳・1709年成立・怪談集)




