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152 糸取り貉
糸取り貉は老いた貉が化けたもので、岩手県の鳳凰山に次のような話が伝わっています。
その昔。
某家に化け物が出るようになりました。
弓の達人の侍が退治に行ったところ、老婆が行灯をたずさえて針仕事をしていました。
侍が矢を射ると、その矢を老婆はやすやすとつかみ取り、あとはいくら射っても同じでした。
この夜、侍は消えてしまいました。
その後も腕の立つ侍が向かいましたが、誰一人として帰ってきませんでした。
最後。
武術の頼りない侍が残ります。
この侍は矢を放ち、老婆がその矢をつかむと、次の矢で行灯の方を射抜きました。
悲鳴がして行灯の火が消え、そこには矢に射抜かれた貉が死んでいたといいます。
一矢を報いました。
一矢を報いる=大勢は変えられないまでも反撃する。




