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136 小袖の手
小袖の手という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『今昔百鬼拾遺』にあり、女の霊が小袖にとり憑き、強い恨みが人の手になったものだとしています。
江戸の町に梅乃という娘がいました。
梅乃は17歳という若さで命を散らし、本妙寺という寺で弔われます。
棺には形見の振袖がかけられました。
その後。
振袖は寺男によって転売され、数人の娘の元を渡り歩きますが、そのたびに娘らは死に、振袖は棺とともに本妙寺に戻ってきました。
住職は数奇な因縁を感じ、振袖を供養するため護摩の火に投げ込みました。
振袖に火が燃え移ります。
するとその炎は人の手のように伸び、寺の高い軒先に火を移しました。
火の手が上がったのです。
・火の手=小袖の手
・火の手=火事などで燃え上がる炎
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『今昔百鬼拾遺』(こんじゃくひゃっきしゅうい)




