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135 奔豚
奔豚は妖虫の一種です。
これは人の体内に生じて病を起こす虫で、戦国時代の鍼灸秘伝書『針聞書』に絵図と説明があります。
その説明では、臍のあたりから込み上げる発作を奔豚と呼び、その病巣は腎臓であるされています。
その形は猪子が走るようで、奔豚はいつも臍の下あたりを動きまわっており、この臍の下は水性を持つ部位であるため、この虫もまた一か所に留まることなく水のように常に移動しているといいます。
またこの虫が体内にある者は色黒になり、塩辛いものを好み、口臭がひどくなるとしています。
腹に奔豚がいる者が医者に問いました。
「先生、奔豚とは豚ですか?」
「トンでもない!」
・トン=豚
・トンでもない=豚ではない=とんでもない
・『針聞書』(1568年、茨木元行著の東洋医学書)




