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129 ヤンボシ1
ヤンボシという妖怪がおります。
鹿児島県や宮崎県に伝承があり、ヤンボシは影法師のような姿で夜の山道に現れ、出遭った人間をどこかへさらっていったといわれています。
ある満月の夜。
二人の猟師がその日の猟を終え、月明かりの山道を下っていました。
「これは親父から聞いたんだけど……」
一方の男がヤンボシの話を始めました。
「昔ここらには、ヤンボシという人さらいの化け物が出たらしいな」
「それならわしも聞いたことがある。大きな影がどこまでも追いかけてくるそうだ」
「でもな、こっちが気がつかないと、ヤンボシもこっちに気がつかないってよ」
そのとき二人の背後に大きな影が現れました。
このヤンボシ。
噂をすれば影がさします。
・噂をすれば影がさす=他人の噂をすると、その人が現れて影がかかる




