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127 家鳴1
家鳴は怪異の一種です。
これは日本各地に伝承があり、理由もなく大きな音がしたり、家の中の物が飛んだりする現象のことです。
とある商家。
日中の繁盛とは裏腹に、夜になると家が揺れ、ギイーギイーと音がするようになりました。
この不気味な音に、家族をはじめ住み込みの使用人らは一睡もできません。
困りはてた主人は某高僧に相談をしました。
その夜。
高僧は屋敷に泊まり込んでくれました。
やがて家じゅうが揺れ始めます。
高僧が念仏を唱えながら揺れる壁に小刀を突き立てると、それまでの揺れがピタリとやんで、壁から真っ赤な血が流れ出ました。
家鳴はその夜が最後でした。
主人がつぶやきます。
「家鳴、ほんとヤーナッタなあ」
・ヤーナッタ=家鳴=イヤになった




