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114 布がらみ
布がらみという妖怪がおります。
これはかつて長坂にあった布沼の主で、青森県三戸郡田子町に次のような話が伝わっています。
その昔。
布がらみは美しい布に化けて沼のほとりの垣根に下がり、見つけて取ろうとした人のもとに伸び、絡みついては沼に引き込んでいました。
あるとき。
布がらみに妻と娘を沼に引き込まれた男が、これに強い怨みを抱き、神のお告げに従って鳩の卵を一つ持って沼に出かけました。
男が沼のほとりで神に祈っていると、沼の水がにわかに音をたてて波打ち始めました。
男は鳩の卵を割って沼に投げ入れました。
その直後。
死んだ布がらみが浮かび上がってきました。
このとき男は、妻と娘の死のシガラミから解放されたのでした。
・シガラミ=布がらみ=しがらみ
・しがらみ=引き留め、まとわりつくもの
 




