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112 毛女郎
毛女郎という妖怪がおります。
江戸時代の黄表紙をはじめ、鳥山石燕の妖怪画集『今昔画図続百鬼』などに描かれてあり、これは顔が隠れるほど長い髪をした遊女姿で、遊廓に現れるとされています。
黄表紙で描かれた毛女郎は、その不気味な印象とは対照的に人気者のようで、男の妖怪たちが毛女郎をめぐって争ったり、反対に毛女郎が恋仲になった妖怪のために、相手の名の刺青を入れるなどの儀式をしている場面が見られます。
ある遊廓。
某男が知り合いらしき女のうしろ姿を見かけ、かけ寄って顔を見ると、その女は全身が毛におおわれた毛女郎でした。
「げっ!」
男は腰を抜かして尻もちをつきました。
毛女郎が笑います。
「ケケケ……」
・ケケケ=毛=ケケケ(笑い)
・遊廓=公許の遊女屋を集め、周囲を塀や堀などで囲った区画
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『今昔画図続百鬼』(こんじゃくがずぞくひゃっき)




