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111 猿神1
猿神という妖怪がおります。
日本の中世の説話集『今昔物語集』『宇治拾遺物語』などに、猿神は人間に害をなす妖怪として登場します。
その昔。
美作国中山の神である猿神は、年に一度、村人らに若い女の生贄を求めていました。
ある年。
生贄に選ばれた娘の家族が泣いていると、そこへ犬を連れた猟師が訪れ、猿神退治にと生贄の櫃に入りました。
やがてそこへ、猿神が百匹ほどの猿を引き連れて現れました。
猟師は犬とともに櫃から飛び出して、猿たちを次々に倒していき、ついに猿神を残すのみとなりました。
猿神は観念したのか逃げていきます。
犬があとを追おうとしましたが、猟師はそれを止めました。
サルものは追わずでした。
・サル=猿=去る
・去るものは追わず=自分から離れて行こうとする者は、その意志に任せて強いて引き留めない
・『今昔物語集』(作者不詳・平安時代末期に成立の説話集)
・『宇治拾遺物語』(作者不詳・鎌倉時代前期成立の説話集)
 




