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11 払子守
払子守という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』では、仏具の払子が年を経て付喪神となったものだとしています。
払子とは煩悩を払う法具であり、柄の先に束にした獣毛や麻などがついたもので、本来はハエなどの虫を追い払うために使われた仏具でした。
ある日。
木魚達磨が本堂で座禅を組んでおりますと、そこへ払子守が手にした払子を振り振り、腰を振り振り、ふらふらと踊りながらやってきました。
「木魚達磨さん、少しは煩悩は払えましたかね? ほっほほほ……」
払子守は声高に笑ってから、再び踊りながら立ち去って行きました。
木魚達磨がつぶやきます。
「ほんと虫が好かんやつだ」
・虫が好かない=どことなくいやな感じがして気にいらない
・払子守=本来はハエなどの虫を追い払う仏具
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『百器徒然袋』(ひゃっきつれづれぶくろ)




