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100 虎隠良
虎隠良という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』にあり、頭が巾着、全身毛だらけで、熊手を持った姿で描かれています。
その解説文。
「たけき獣の革にて製したる巾着ゆへにや、千里をはしるがごとし」とあり、強い獣の皮で作られた巾着から生まれたので、足がとても速く、千里を走るようであるとしています。
また一説では、名前の「いんりょう」と「いんろう」をかけ、薬を入れる印籠の付喪神ではないかといわれています。
そんな虎隠良に出遭った者が、「巾着の中身は何だ?」と問うと、虎隠良はそれには答えず小さく笑い返してきたといいます。
クスリ。
・クスリ=クスリ(笑い)=薬
・巾着=開口部を緒で絞める袋
・熊手=柄の先に爪を多数取り付けた清掃などに用いる器具
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)




