表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/12

08_シロの話

「まず最初に、腕は痛くないか?」


「はい、痛くないですよ?」


シロはケロッとしている。

確かに、痛み止めは飲んでいる。

だけど、骨折して、痛くないということがあるのだろうか。


「まあ、痛くないなら良かった。でも、腕の骨は折れているから注意してな」


「はいっ」


無駄に返事がいいんだよ。

シロだから。


「そのー、何か変化はないか?」


「はい?何もないです。シロは元気です!」


ギブスのまま敬礼をしている。

腕は本当に大丈夫なのか!?


とりあえず、頭を撫でてやる。

シロは目を細めて嬉しそうにしていた。


うーん、シロだ。

間違いなくシロだ。


(なでなでなでなでなでなで)


「にゃあ」


『にゃあ』いただきました!

シロはいつもと変わらずご機嫌だ。


「シロ、一ノ清まひろ分かるか?」


シロがぴたりと止まった。


「やっぱり、何か知ってるんだな?俺に話してくれ」


「はい・・・でも・・・かみさま、手をつないでて・・・」


ベッドに座っているシロは、怒られた子供の様にしょぼんとしてしまった。

手くらいでいいならお安い御用だ。


シロの手に俺の手を添える。


「夢・・・」


シロがぽつり、ぽつりと話し始めた。


「夢?」


「まひろは・・・夢の中に出てきたの」


「それで?」


「・・・って・・・言われたの」


「ごめん。何て?」


「かみさまを・・・ちょうだいって・・・」


「俺を・・・?」


「ダメー!!」


両手を前にしてシロが急に騒ぎ始めた。


「あれ?」


いや、この様子はシロじゃない。


「まひろか・・・いま、シロと話してたんだけど?」


まひろは立ち上がって窓際に進んだ。


「ふんっ、悪かったわね。シロじゃなくて」


「シロに、何て言ったんだ?」


「え?ええ?えええ!?な、なななんにも言ってないわよ?」


目が右へ左へじゃぶじゃぶ泳いでいる。

よほど聞かれたくないことをシロに言ったらしい。


一つ分かったことは、意識の中でシロとまひろは会話ができるらしいこと。

自分では体験したことがないので、全くイメージは湧かないが、シロは夢の中で言われたと言っていた。


「そんなに聞かれると困ることを言ったのか?」


「わわ、私は、何も、い、言ってないわよっ!?」


顔が真っ赤だ。

どうしてここまで嫌われたのか・・・


そう言えば、シロとはイチャイチャしまくっていた。

自分の身体で、意識のない状態(?)で他人からベタベタ触られたらいい気はしないだろう。

もしかしたら、それだろうか・・・


その場合、かなり手遅れな気がする。

シロの身体はほとんどの場所を触ったし、俺もほとんどの場所を触られてしまっている・・・


うーん、同情してしまう。


「ごめんな」


「なななな、なにが!?」


どうにも挙動が不審だ。

まあ、多重人格なんて普通の心理状態じゃないんだろう。


他人の俺が部屋にいたら、くつろげるものもくつろげないだろう。


「ごめんな。とりあえず、俺の部屋にいるから。またシロに替わったら教えてくれ」


「え?行っちゃうの?」


俺が部屋を出ようとしたときに、意外な言葉が聞こえた。


「え!?いや!今の無し!出てって!私の部屋から出てって!」


色々不安定らしい。

しょうがないので、隣の部屋に移動だ。


家には俺とシロ(まひろ)と家政婦の辻さんしかいない。

リビングにいると、掃除の邪魔になるので、とても気まずい。


しょうがなく、パソコンも何もない隣の『俺の部屋』に移動する。

とりあえず、布団を敷いて横になる。


パソコンもタブレットも全部シロの部屋だし。

スマホは持ってないし。

せめて部屋にテレビが欲しいな。


ここは急に寝る場所が無くなった時用の部屋なので、本当に何もない。

リビングに行って、テレビを見ようかな・・・


どうしようもなく暇を持て余していると、隣の部屋の声が聞こえてきた。

そりゃあ、紙を貼っているとはいえ、壁に大穴が開いているので、よく聞こえるだろう。


「うわーん!またやっちゃった!やっちゃった!やっちゃったー!」

(バタバタバタバタバタバタバタバタ)


この音は、ベッドの上にうつ伏せで足をバタバタしている音だろう。


「かみさま呆れてた!バカバカバカバカバカバカバカ!私のバカ!」


は?『かみさま?』シロなのか?

いや、あの口調はまひろか?


盗み聞きは良くないと思いつつも、自分の名前が呼ばれたので、気になってしまった。


「私も『かみさま』ってよーびーたーいー!頭撫でてもらいたいー!!」


おい。

ちょっと待て。

彼女は何を言っている!?


「なんて言う?なんて言うの?相手は大学生。私は16歳、ニート。どこ!?どこなの!?私のどこを好きになるって言うのよ!?」


何か頭痛がしてきた・・・

俺は一体何を聞かされているんだ・・・


壁の大穴の前でボーゼンとしていた。


(ビリっ)


まひろが壁の紙を剝がしたようだ。

『そう言えば』と思ったのかもしれない。


覗き込めば当然俺と目が合う。

『絶望』と顔に書かれているのが見えるほど青い顔をしている。


「うぐー!」(ガンガンガンガン)


まひろが壁に思いっきり頭をぶつけている音が聞こえる。

これはいかん。


「やめろ!まひろ!」


俺は部屋を出て、まひろの部屋のドアを開ける。


まひろは舌を出して目をギューッとつぶっている。

何だこれは!?


「もう死ぬ!あんな恥ずかしいことを聞かれたらもう生きていけない!舌を噛んで死ぬのっ!」


もう、軽く眩暈がしてきた。

まひろに近づくと、まひろは涙目だった。

これはもう、いじめられっ子とほとんど違いがない。


シロの要領で頭を抱きしめて、撫でてやった。


「う・・・うきゅぅ・・・」


こいつらは頭を撫でられると何か音を発しないと死ぬ生き物なのか・・・


「今の本当か?」


「ううう・・・やっぱり聞こえてた・・・死にたい。もう、今すぐ死にたい・・・」


「まひろに死なれたら、俺が困る。ごめんな、気付かなくて。出会ったばかりだと思ってたし・・・嫌われてると思ってたから・・・」


「ううう・・・シロが・・・シロの気持ちがこっちまで、どくどく流れてきてて・・・あんなの四六時中だから、こっちの頭もおかしくなる・・・」


まひろは半泣きだった。


「どうだろう?まひろのこと、シロのこと、教えてくれないか?」


「・・・」


「ダメかな?」


「話したら・・・衛さん・・・私のこと嫌いになる・・・絶対嫌いになる・・・」


目の前で大粒の涙をぽろぽろ流す彼女を見て、不謹慎だとは思うけれど、かわいいなと思ってしまった。

そりゃあ、最愛の人と同じ姿格好。

声だって同じ。

長いまつげだって同じなのだ。


悪い感情を抱く方が難しい。


「2人の話が聞きたいんだ」


しばらく、まひろを落ち着かせてから話を聞くことになった。


朝6時、昼12時、夕方18時の予定です。

よろしくお願いいたします。


右下のブックマーク登録と

その下の、☆☆☆☆☆を★★★★★にしてもらえたら嬉しいです♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おやおや〜? まひろさん〜?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ