01_新しい甘々な生活
猫カレー(作者)自身が前作「現代の奴隷は実は天使で主人公は全力で幸せにする」終了でロスになって、その後の様子が見たくなりちょっとだけ書きました。
10話くらいで終わる予定です。
「かみさま、暑くないですか?」
「それは・・・シロが俺に抱き着いているからじゃないか?」
もう5月を迎え、随分温かくなってきた。
そんな少し暑い日だというのに、俺たちはシロの部屋に引きこもりがちだ。
10畳ほどの部屋にソファがあり、そこに座ってテレビを見ている。
そして、声の主、シロがすぐ横に座っている・・・と言うよりは、俺とソファの間に入り込んで、俺の背中から抱き着いている状態だ。
ちなみに、シロの脚は俺の脚の上に載っているので、完全に「ダッコちゃん」の状態だ。
この説明は何歳くらいの人まで通じるのか不明だが、後ろから抱き着かれている。
暑いのは気温のせいもあるけれど、ほとんどがこの密着率の高さだと思う。
「シロ暑いから脱いでもいいですか?」
「ちょっと待て。脱いで抱き着かれたら俺がたまらん」
「でも・・・(くんくん)」
「シロさん、そう言いながら密かに背中に顔をつけて、においを嗅ぐのをやめてもらえないだろうか」
シロはにおいフェチの傾向がある。
事あることに俺のにおいを嗅いでいる。
「かみさま、良いにおいですよ?」
「良いにおいかどうかは分からないが、とにかく恥ずかしい」
「でも・・・(すー、はー、すー、はー)シロは好き・・・(くんくん)ですよ?この辺りが特に好き」
「もうやめてあげてー」
シロは俺の背中に顔を付けたまま、不満そうにしている。
真後ろだから見えないけれど、間違いなく不満そうだ。
「よし、少し早いけれど、エアコンを入れるか」
「エアコンを入れたら涼しい!」
俺がエアコンのスイッチを入れソファに戻ると、シロは前から抱き着いてきた。
これはもう、テレビに飽きてイチャイチャしたいときの状態だ。
「かみさま、ちゅーしていいですか?」
(ちゅっ)
俺の返事よりも先に口にキスされてしまった。
「かみさま、すきー」
シロが俺の胸に顔をうずめてすりすりしている。
この部屋に住まわせてもらうようになって、3か月は経った。
シロと一緒に住み始めて足掛け1年弱。
我ながらよく飽きないものだと思う。
「かみさま、シロを見て」
「どうした?」
俺の胸元の高さのシロの顔を見る。
「よーく見て」
シロが俺の目を覗き込んでくる。
この上目遣いがどうしようもなく可愛い。
抱きしめたくなる。
それはそうと、どうしたというのか。
「かみさまの目・・・シロしか映ってない♪」
そりゃあ、これだけ近ければな。
もう、完全にテレビとか、どうでもいいらしい。
平日の昼間だし、それほど面白い番組はやっていないのでしょうがない。
何か考えようと思ったけれど、シロに邪魔されて何を考えていたか忘れた。
「(ちゅっ)かみさま(ちゅっ)3時になったら(ちゅっ)おやつを買いに(ちゅっ)コンビニ行く?」
最近はキス魔の傾向もあるのか、会話の途中でちょいちょいキスされる。
嫌いじゃないけど?
嬉しいけど?
ただ、やっぱり恥ずかしいので俺の耳は真っ赤になっているだろう。
「思い出した!今日、永一郎さんが昼過ぎにリビングに来てって言ってた」
『永一郎さん』とは、シロの父親、一ノ清 永一郎さんのことだ。
この家の家主であり、たくさんの不動産物件を所有している資産家だ。
リビングは、30畳はあろうかという広さ。
そこにコの字に革張りのソファは置いてある。
その先には大画面テレビ。
あれって家庭に置くものだったのか・・・電気店のディスプレイ用だと思っていた。
いかにもお金持ちそうなものと言えば、暖炉がある。
形だけなのだが、この部屋の雰囲気にはバッチリマッチしていた。
調度品も多く、素人にも高級品だと分かる。
そして、嫌みじゃない感じがこのご夫婦の人柄の良さを示していた。
俺は、この家に居候させてもらっている状態だ。
シロの部屋で、2人で住ませてもらっている。
シロと俺が離れるとシロが精神的に不安定になるらしい。
それならばと、家賃程度お金を入れようとしたけど、一ノ清夫妻は、シロの治療も兼ねているからと言って受け取ってくれなかった。
更に言うと、3食付き。
おやつもお茶も出してくれる。
下手したらお小遣いまでくれる。
驚いたことに、家政婦さんもいるので、俺たちが買い物に行っている間に部屋は掃除してもらえる。
なんだこの好待遇・・・
将来は、まひろ(シロのこと)と結婚して、家を受け継いでほしいとも言われていて、完全に親子総出で俺をダメにしようとしている。
その永一郎さんがローテーブルをはさんで向かいに座っている。
そして、俺の横にはシロが座っていて、シロは俺の胴周りに手を回している。
どう見ても抱き着いている状態だ。
まあ、抱き着いているのだが。
「いや~、きみたちはいつも仲が良いねぇ」
「あ、すいません。変な感じで・・・」
永一郎さんは嫌みで言ったわけではない。
あまりにもべったりしている俺たちの方が間違っている。
「いや、いいね。部屋でもそんな感じなのかな?」
「いや~、部屋では・・・」
もっとひどいんですが・・・
とても言えなかった。
いくら記憶がないと言っても、実の親の前だ。
そう、シロはここ1年くらいの記憶しかなくなっていた。
以前のアパートの隣の部屋のベランダにいて、それを俺が保護したところから始まった。
最初はガリガリで、髪の毛はもじゃもじゃ。
男か女かも分からない程だった。
例えるならば、現代の奴隷。
風呂に入れて、ご飯を食べさせて、着替えさせて・・・長い時間をかけて少しずつ『普通』の生活ができるように慣れて行った。
隣の部屋では何年間も虐待されていたのかもしれない。
全身にやけどの跡がある。
古い火傷の跡だが、シロの白い肌に赤く痣の様に浮かび上がっていて、それを見ると悲しい気持ちにもなる。
そんな過去もあって、できるだけ幸せに過ごさせてやりたいと思っている。
虐待のこともあってか、ここ1年くらいの記憶しかなく、俺のアパートの部屋で過ごした記憶しかないらしい。
色々あったので、あのアパートは引き払った。
俺は、完全にこの家・・・と言うか3階建ての屋敷に住まわせてもらっている『ひも状態』だ。
「それで、今日はどうしたんですか?改まって」
永一郎さんに訊ねた。
やっぱり出て行ってほしいとかだろうか。
思い当たる節がありすぎる。
大学(通信制)の勉強は続けているが、所詮は大学生。
時間はたっぷりある。
バイトもちょこちょことやっているが、それでも以前よりも数が減った。
堕落傾向だ。
「そろそろ、まひろの誕生日だから、パーティーでもしようかと思って」
そうか、最初17歳だと思っていたシロは、実は15歳だった。
あの母子手帳って結局誰のだったんだ!?
そして、シロは今度16歳になるのか・・・
奥さんの鈴麗杏愛さんがコーヒーを持ってきてくれた。
シロは、脇目も降らず一緒に持ってこられたお茶請けのクッキーに手を出した。
鈴麗杏愛さんはその様子を微笑みながら、永一郎さんの隣に座った。
「そうですか。誕生日・・・」
「どうかしたかね?」
俺は苦笑いしていたようだ。
「シロ・・・まひろさんの誕生日知らなくて、去年の8月ごろ17歳の誕生日をしてしまったんです」
「ははは、そうかね。でも、それはありがとう。本当の誕生日は6月7日なんだよ」
「あ、もうすぐですね!」
「ああ、ここ数年、妻と2人で祝っていたから、今年は・・・ね」
永一郎さんは少し寂しそうな目でシロを見た。
シロは・・・一ノ清まひろは、5年ぶりにこの家に帰ってきていた。
「シロ、良かったな!誕生日パーティーだって」
「誕生日?誰のですか?」
「誰って、シロのだよ」
「え~、シロの誕生日は8月だよ~?」
「それが、間違えていたんだよ。本当は6月7日だった」
「違うもん!シロの誕生日は、8月11日だよ!かみさまが言ったもん」
しまったなぁ。
実は、シロは自分が「一ノ清 まひろ」だとは認めない。
DNA検査で検証されたのだから、一ノ清夫妻の子供であることは間違いない。
しかし、記憶がないために、自分のことを『シロ』だと思い続けている。
『シロ』は名前が分からなかったときに、俺が勝手に付けた名前だ。
髪の色の銀髪から『シロ』と名付けた。
銀髪なのだから、『ギン』とかになりそうだけど、黒髪が普通と思っていた俺にとって銀髪は『白い』と感じたのだ。
シロがいて、俺がいる。
にこやかで優しいシロの両親がいて、安定した生活。
少し堕落しそうな不安もあるが、甘々な恋人である、シロといつも一緒にいられるのならば、控えめに言っても幸せだろう。
今が幸せならばいいかと思っていたが、長年の虐待の後遺症は見えないところで残っていた。
そして、それがこの誕生日の日に露呈することになった。
とりあえず7話くらい書いたので、
1日3回更新でアップします。
朝6時、昼12時、夜18時の予定です。
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