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XG都市  作者: 一桃 華
5/5

9割が保健室登校って?

こんばんは。近未来異世界を描いている回の小説になります。


異世界転生とパラレルワールド、近未来が融合しているので、

すみません、読む順番は雑多です。


でも性格上、書きたいことを書いている小説になりますので、

素人あるあるでお付き合いいただける方、反応お願いいたします。

        ※


 この世界はちょっと歪んでいる。

 ナインの見解はそうだった。けれどそれを上回るほどの技術と第6次産業革命の文化的な生活がある。


 学校に入る時は生命維持装置をつなぐので、夕食についてはいつも見た目から満足するご馳走を与えられている。匂いも味も、格別だと思った。それが生命維持装置として繋がれ、栄養補給だけを目的とした食事だったとしても、それほど豊かではない外国の村で育ったナインには十分満足する代物だった。お腹が空かない状態を維持できているというのは素晴らしい。ナインはそう思っている。


 得たい知識に対して、学校の教授陣のレベルも高い。あらゆるデジタル技術を駆使して、みたこともない理論を教授してくれる。この時代レベルの高い画一した授業といったものに力を入れているらしく、授業に退屈する要素など微塵もなかった。


 ミャンマーにいた頃は、勉強といえば独学だった。もちろん教育する機関もあり、ナインはそこに通っていたのだけれど、先生が年寄りで、彼の口調は3倍速で聞きたいくらいのスピードだった。午後の眠気をどれだけ我慢していたか。そんな経験があるナインだったから、日本というこっちの世界の歪みに気が付いてはいたが、違和感を打ち消した。


 医学部というところに顔を出すと、部屋自体が見たこともない構造になっていた。

 例えるならば人間の血管みたいなグロテスクな管が、医学部局には伸びていて、昔見たリバイバル映画のエイリアンが乗った宇宙船のような雰囲気を醸し出している。


「本日医学部に来られる転入生の話は聞いています。入りなさい」

 こればリアルなんだよなぁーー。

 入いれっていっても、学生証の認識で扉は10センチほどしか開かなかった。


「どうした? 入いりなさい」

 入室を促された。こんな隙間からは入いれる図体ではない。

 したがってナインは、生き物のような管が引っかかってスムーズに開かないドアを力任せに開けることになった。


「おや? 立派な体格だ」

 医学部の先生は開口一番そう言った。つまり最近の若者はあの10センチ程度開いた扉から出入りしている様子だと推測される。


「ミャンマーでは畑仕事なんかもして、力仕事をしていました。それに昼間起きて活動して、夜は眠っていたんです」

 半ばこじ開けるようにしながら、10センチの幅を15センチくらいに押し広げ、ナインは医学部を訪ねている。


「プロフェッサー、港先生ですか?」

「いかにも、私が港です。あーー、でもそれ以上は扉を開けないでください。色々な実験装置がちぎれそうだ」

 港教授という人は表情ひとつ変えずに、それでも扉に絡みついた血管のような幾重もの管を心配している。


「ほら、そこも踏まないで」

「はい」

「あ、そこ潰すと栄養不良になって、死ぬ人いるから」

 港教授にさらっと伝えられ、ナインは血の気が引いた。


 まるで地雷だらけの土地に足を踏み入れたのだ。ナインは慎重になった。

「先生、踏んだり切れたりしたら人が死ぬって、えっと、それはどういう状況なんですか?」

 医学部ってなんだ、と思って恐々聞いてみる。


「ああ。保健室登校児童がいるって言えば理解できますか?」

「保健室って言葉は、理解しています。具合が悪い人を預かっている場所なんですよね?」

 医学部のことを調べた時も、学生に対して治療を施す施設であることが明示されている。


「うーん。正しくはそう言った理解で結構です。ですがこちらの学院に関する、いわゆるあなたの保健室登校生徒の割合を把握していらっしゃいますか?」

「そこまででは、すみません」

 ナインがそう言うと、港教授は表情を変えずに小さく肩をすくめていた。

「9割なんです」


「え?」

 ナインは聞き返した。

「それって僕のように眠れなくなる可能性があって、学生が薬をとりに来る人が多いってことですか!?」

「いえ。眠るための薬であれば月に一回いくらでも処方しましょう」

 ナインはホッとする。


「でも、そうすると保健室登校ってなんですか?」

 また港教授が肩をすくめたように感じた。しかし実際には彼のジェスチャーは片眉ひとつ動いていないので、ナインの勘違いかもしれないと言ったレベルだ。


「申し上げておきますね。この世界では9割の学生さんが起きていたくないのです。と言うことで学内の9割は保健室登校になります。それを受け入れている学院は、24時間、学生さんの生命維持活動のために医学部を設置し、彼らが死なないように学ばせながらコントロールする必要があるのです」

 言葉の意味を理解するには数秒かかる。

 えっと。それってこの学院のーー。


「生徒の9割がずっと眠っていることを希望しているってことですか?」

 港教授はうなづいた。


「そうなのです。だから眠るカプセルは揺れていなければ床ずれになりますし、今あなたが切断しかけた管は、彼らの生命維持活動に必要なものを運ぶ重要なものなんです。ーーあなた、この国の何も知らずにこちらに来られたんですね?」


 港教授は吐息をついた、とナインは察知する。

「ええ。祖母の憧れの国だったので」

 港教授がナインの故郷にいる人だったならば、いったいいつの時代のことを言っているのかと苦言を述べていることが想像できたが、港教授は時間の無駄とばかりにナインに薬を処方した。


「このように原始的に眠る薬を所望されることは滅多にありません。ですので少々古い薬ですが、効果はあるでしょう」

 原始的と言われた点に付いては顔が熱った。

 だったら一般的な治療って?


「普通はどうするんです?」

「カプセルに入ってもらいます。まぁカプセルもそれほど空きがないので、少し待っていただくことになりますが、お望みですか? 正式に入学が認められれば可能ですけれどーー」

「いえ! 結構です」

 ナインは薬が入った袋を受け取り、また15センチほど開いた扉の外に出ていった。

 その尻目に、カプセルに入った若い学生の顔がチラチラと見えている。


 表情は、本当に幸せそうに見える。でもだらんと口を開け、全ての生命維持装置を機械的に置き換えている。それってなんだか違う気がした。


 ナインが生きてきた国にあっても、仕事に疲れすぎて、死んだ魚のような目をしている人はいた。何を諦め、それでも労働を続けていれば、こんなふうになるのか。どうすればそんな疲れて、諦め切った目になるのかと、考えてみたことはあった。


 でも、この状況は違うし、働いてもいないと言うのに、つまり社会人として社会を見てもいないのに、異常だと思ってしまった。


 全く。

 これから先、この日本という国でどうすればいいものか。

 ナインは来日早々、迷ってしまった。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「異世界で勝ち組になる取説」

「戻った場所は、異世界か故郷」

シリーズの9作目になります。この後、異世界未来ストーリーに展開します。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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