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第五話 女神

 地面に落ちた灰から、飛び出す。

 今のは即死だったからか、痛くはなかった。

 しかし、依然として街までは遠い。はるか視界の端に見える程度だ。それに比べて進んだ距離と言えば100メートルあればいいほう。その成果の大半は先ほど投げ飛ばされて消し炭にされた時のものだ。

 このペースだと、街についてからあいつを撒くまで一体何回死ねばいいのかわからない。


「なんだお前は? なぜ死なない?」


 そんなこと、こっちが聞きたい。

 死ねるならばさっさと死んで、出現場所をリセットしたい。

 こんなのゴミスキルもいいところだ。使えないどころか、完全にマイナスな状況。


「あぐぅ」


 あっけあく追いつかれ、オレは地面に押さえつけられる。

 あちこち擦り切れたのか、そこらかしこ痛い。

 だが、痛みの程度はかなりましだ。


 ただ……心がもう持たない。


「もう……やめてくれ……やめてください……お願いします……」


 オレには懇願するしか、選択肢はない。


「じゃあさっさと死んどけや」


 涙で視界がぼやける。

 怖い、痛い、苦しい、もうなにもかもが嫌だ。

 助けてくれ。

 こんなスキル、欲しくなかった。


「オレのスキルは……死ねないスキルなんです……もう……やめてください……」


「殺したはずなのに生き返ってすぐ逃げるのはそういうことか」


 マッチョはオレの状況を察したらしい。

 それを考慮した上で、彼はいやらしい笑みを浮かべている。


「スキルなしと同等で、殺しても逃げられない。オレにはそんな趣味はねぇが、ストレス発散に丁度いいなお前。喜べ、貴重だぞ。高く売れそうだ」


「え」


 一体、こいつはなにを言っているんだ?


「鬼畜な野郎にでも売り飛ばしてやるよ。永遠にサンドバックにでもなってろ。それがお前の価値だ。ははははは」


 いやだ。そんなのいやだ。

 なぜ、そんな考えができるんだ?

 こいつは人間なのか?

 こいつこそ鬼畜そのものじゃないか。


 このまま捕まっていれば地獄しかない。

 かといって、逃げられるわけでもない。


「ぐあああああああ」


 蛇がオレの足を噛み、雑に引きずっていく。


「この世界にもな、人身売買があるんだぜ? 死ぬまでの一時的なもんだったけどな、お前は永遠の奴隷になれるんだ。すごいスキルじゃねーか」


 マッチョは嬉しそうに笑っている。

 なにが楽しいんだ。

 弱者を痛めつけて、そんなに楽しいのか。


「いやだ……。やめでぐだざい」


 オレは必死に抵抗し、蛇の頭を何度も叩くがびくともしない。なんの抵抗にもならない。

 むしろ殴った分だけ牙が食い込む。

 だからと言って、抵抗をやめることなどできやしない。

 この先、もっと酷い地獄が待っているのだ。

 どれだけ痛かろうが、どれだけ辛かろうか、今、抵抗しないでいつするというのか。


「嫌だ……。嫌だあああああああああああ」


 痛みはどんどん増していく、いっそのこと出血多量で死んでくらないだろうか?

 そうすれば、逃げることも可能になるかもしれない。

 しかし現実は無情だ。

 牙がしっかりと止血になっている。血の流れが悪い。これじゃいつ死ねるかわかったのもではない。

 そもそも、死んだからといって逃げられるわけがない。

 もう何度も簡単に捕まっている。


 これがスキル持ちとスキルなしの差だ。


「だれが……だずげで……」


 ぐちゃぐちゃに泣きながらも、助けを求めた。


 その時――。


「チートな世界へようこそ!」


 さっきも聞いた言葉が聞こえた。

 声の先には金髪美女と、見慣れない少女がいる。


「あ? なんで金髪くそ女がここにいんだ?」


 マッチョが悪態ついた相手。

 オレがこの世界に来ることになった元凶。


 そんな金髪くそ女と呼ばれたそんな彼女が、


「アリス!!」


 オレには女神に見えた。

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