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仮設風向計/詩集その3

ブルーページ/予感

作者: 浅黄 悠

「ブルーページ」


何かを作るための道具ほど輝いて見えるものはない

取りつかれた人達が交差点を渡っている

君も変わっていく

元から言葉なんかでは誰も救えない

歪みへ効果を示すだけの薬では

この手では何も変えられない


理不尽へ苛立つ少年達を見て君が

ふと戸惑ったような眼をする

願いを指して紙飛行機が飛ぶ

旅客機が消える


若さとは何なのか

人は昔から賑やかな場所に集まって

一生を過ごしていたのだろうか

何かを作るための道具を抱いて

白い設計図を持て余す


光と色と音が溢れているのに

何も本当のことを指してはいない

本当に望むものではないのに

ここにあるもので満足するしかないから

妥協して手を伸ばすような日々の続きに

ずっと飽きていたことに気付いたんだ

ページを捲っても

君の欲しいものは何処にも無くて

辺りには香料に混ぜられた人間臭さが充満している

それだけ嫌気が差しているのに

両手を温めてくれる人はなかなかいないものだね


例えば色んなことがもっと単純であれば

脂と水

空に浮かぶ月と

下に沈む海のように

地上に生まれた人々と

彼らが造った街

乾いた空気と晴天に拡散する氷の結晶


背丈が伸びた

綺麗な靴を履くようになった

そんな君の何が落ちぶれたというのだろう

分からない僕は幼いのだろうか

青い微笑みは変わらないものだと

信じ込んでいるだけなのだろうか


僕と二人でこの街を生きていこうよ

そんな言葉もありふれている

だから代用の出来ない空白へ頼るしかできない

虚脱したアドバルーンのように


何もかも見透かしたような眼をしているから僕は嫌われる

何も見えてはいないんだけれど

用途不明の兵器のように自分を上手く使いこなせなくて

いつも不満があるような顔をしているから僕は嫌われる


元から言葉では誰も救えない

希望とは何なのか 

愛とは何なのか誰も知らない

君は誰の物でもない

進んでいく人は振り返らない

落ち込んでいる人は誰の手もすり抜けていく

ここには実の意味で誰もいない


望むのは直線

充血しそうな眼差し

こんなことを続けていたら

いつか君は壊れるだろう

それでも続けているのは

独りだけの景色を見るために

地上に君が求めるものがもう何もないというのなら

僕は一体どんな表情をしていればいいんだろう




_________


「予感」


首都高を巡るライトに

溜息ひとつ

誰も君の問いには答えを持っていないという風に

アップライトの教育的な音

7度和音を綺麗に

僕達はここで何をしているのだろう

本当は早く家に帰りたいような


未来図は自動販売機のディスプレイに

理想は机の上の赤本に

そんなものではない何かが欲しいけれど


きっと今は

僕と君が近くにいることだけを信じなければいけない

映画や先生や過去の君の言葉

この場で押し流されていけばいいのに


電光掲示板に流れ星ひとつ

自分の標になるのならば

空き缶にも縋り付く

揺らいだ灯火は既に消えていることを知るけれど

僕は未熟さを誤魔化すばかりで

何も知らないことすら隠し通せない

認められないものへどれだけの価値があるのだろう


消した照明に積もる埃

網戸ごしに風のテノール

ここはありふれて幸せな土曜午後3時

メトロノームのように惑わない

君の指を僕の掌中へ攫いたくなる

今の君が夏の曇り空なら

悪だくみするような笑顔も見てみたい


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