第五話
次の日僕はいつもの場所に向かった。ただ一ついつもと違うことは『告白をする』それを決めているだけだ。ただそれだけの違い、たった一つの違いなのに、いつもと全く感じが違った。
しかし、いつもと違う事はこれだけでは無かった。
「遅いな……」
誰に言うわけでもなく僕は呟く。
時間は…たぶん正午を過ぎたくらいかな?
いつもならミサが先に来ていたのに、遅くても30分以内には……
「ふぅ……どうしたのかな?」
寝坊でもしたのかな?
そんな事を考えながら告白しようとしている相手が来るのを待った。
カナカナカナ……
ヒグラシが鳴いていた。辺りがオレンジの光に包まれている。悠木もオレンジの光に包まれている。
ただ、オレンジ色に包まれているのは悠木一人だった。
「来なかったな……」
独りつぶやく。風邪でもひいたのかな? そう考えながらも僕は嫌な予感がした。
もし風邪をひいて来れないなら、それでいい。だけど……
昨日のミサの言葉を思い出す。
「まさか、もう会えないとか無いよね?」
いつもと違うミサ、そして今日は来なかった。不安が拭えない……
……きっと風邪だ! 明日には来る! そしてまたあの笑顔を見せてくれるはずだ! そう言い聞かせて家に帰った。
しかし、次の日も。
また次の日とミサは来なかった。
そして数日が過ぎ……
夏休み最終日。
「ふぅ……結局最後まで来なかったな……」
周りを見渡した、そこにはミサがいない。ミサがいないこの場所はすごく寂しく感じた。
「告白……出来なかったな」
「せめて…せめて! 結果はどうであれ、告白ぐらいはさしてくれよ」
「これじゃ〜僕は……」
泣いていた……
「ひと夏の思い出にしては、あまりにもひどいじゃないか……」
学校が始まる。そうなると僕はもうここに朝から来て待つということは出来なくなる。
だけど、学校が終わっても僕はここに来てミサの事を待つだろう。
しかし、それも時間が経つにつれ、諦めて来なくなるだろう。その時に僕は本当に『ひと夏の思い出』として踏ん切りがつく。今はその日を待とう……
きっと、きっと良い思い出として、懐かしめるその日を……