後片付け
襲撃から5日後
ホークは王宮の謁見の間の前にある控えの間にいた。横にはマウリシオがいる。
品のいい調度品と座りやすいソファーに美味しい紅茶で謁見までの時間を待つ
そうすると迎えの兵士が呼びにきた。
謁見の間は沢山の兵士と上級貴族達そして中央に真っ赤な絨毯にその先に玉座があり、だいぶ顔色の良くなったエドガー3世が座り両隣に新しく内務卿となった50代の男とエリザベスが立っていた。
ホークとマウリシオは片膝をつき頭を伏せて王の言葉を待つ。
ひと呼吸して内務卿が言葉を発する
「このたび、先の内務卿・ならびに先妃と
不遜にも陛下に対して暗殺などと言う非常事態が起きた。今回の件ではそこにいるエルダー商会のマウリシオの機転により陛下の命が守られた。よってここに褒賞を与えるものとする。陛下、お願い致します。」
エドガー3世が玉座から立ち上がりマウリシオに声をかける。
「面をあげよ。マウリシオ、この度は大義であった。」
「はっ。もったいなきお言葉」
「そしてホークよ、良くワシとエリザベスを助けてくれた。礼を言う。」
「ありがとうございます。」
「さて、エルダー商会には此度の褒美として白金貨を10枚と来年度から10年間、一般兵士の装備及び兵糧などを任せる。良い品を納めて欲しい。」
「はっ、有難きお言葉。必ず良質なものを納める所存でございます。」
「そしてホークよ、そなたには褒美として我が国の名誉騎士として男爵の爵位を叙する。一代限りの名誉職なので土地の拝領はないが特別に年に白金貨1枚を給金とする。」
これには、周りの兵士だけでなく列席した上級貴族からもざわめきが起こる。
「静かに!王の御前であるぞ?この度の賊は第1騎士団の団員を10名も殺害したかなり腕の立つ暗殺者だ。それともこの中で精鋭揃いの第1騎士団の団員10名を倒せる者はおるのか?」
内務卿の言葉に反論できる者はいなかった。
上級貴族と言えどロクに剣も握れない世襲制度の貴族のボンボン達がほとんどである。
「リンドバーグ内務卿の言う通りだ。ホークは危険を顧みず我が盾となり命を守ってくれた。本来ならばもう少し位を上げても良いところをホークの嘆願もあり男爵に留めておるのだ。」
「良いか、我が国では古来より騎士たる指揮官は最前線にいなければいけないのだ。今回の事で形骸化している世襲制度を見直す事も考えねばならん。皆もしっかりと励むように。以上だ。本日は誠に有難うホークよ。」
こうして今回の謁見のは終わった。
謁見の間から出ると第2騎士団の団長ローレルが声をかけてきた。
「ホーク男爵よ、この度は陛下をお守り頂きかたじけない。これも我が騎士団の体たらくが招いた事だ。申し訳ない」
そう言って頭を下げてた。
ローレルも騎士団の団長として男爵の爵位を持っている。
名誉職のホークと違い格はローレルが上になる。そのローレルが頭を下げた。
「ローレル様、お顔を上げて下さい。お話を伺うと今回の事は警備責任は第1騎士団にあるようですし。」
第1騎士団は上級貴族達の子弟達が中心になっていて煌びやかな装備の親衛隊や近衛兵が多い。
反対に第2騎士団は平民や下級貴族の三男・四男など家督の相続権かほぼない者が多い。当然平民の騎士団員は兵士から実力で登用された叩き上げだ。
どちらが真に力を持っているかは一目瞭然だが、腐った貴族の世襲制度では家柄が全てになっていた。
その点、ローレルはこの叩き上げの猛者達をわずか28歳にして束ねる男だった。脳筋だが忠義に厚く善悪をしっかり分かっている。信頼できる人物だとホークは考えている。
「ありがとう、また都に来る時は連絡してくれ。第2騎士団全員でもてなす事を約束する。」
「その時は是非よろしくお願いします。そして2人の時は男爵はやめてもらえますか?」
「どうしてだ?せっかくの名誉なのに?」
「いまさらですが、男爵って柄じゃないし公式な場以外はホークと呼んでください。」
「ハハハ、面白い奴だ。俺も堅苦しいのは苦手だから俺の事も普段はローレルと呼んでくれ!」
そういって2人は握手をして別れた。
翌日
マウリシオは早馬の馬車でウスアイアに先に戻っていった。ルーシアと2人で少し観光して帰って来て良いとの事だった。
その日から帰るまでの宿は王様がポケットマネーでロカの都一の高級宿の最上の部屋を手配してくれた。所謂ロイヤルスイートだ。
特大のジャクジーにベットルームが3つ。ベッドは全てキングサイズより大きい特注品。
部屋に専属のメイド2人とコンシェルジュがついた、至れり尽くせりだ。
あまりに広くて使い切れず、結局入り口の1番小さい部屋で4日間を過ごした。
3日間の内訳は1日目がロカの街でルーシアの買い物。
2・3日目は2人で近くにあるダンジョンに挑戦
4日目は帰る準備とホークの買い物になった。
このダンジョンはランクC冒険者用で2人にはちょうどいいレベルだ。ルーシアの訓練にもなる。
結局2日間ではダンジョンの攻略まではいかなかったがルーシアには大変良い経験になった。