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「組曲・三つの黒ミサ曲」バンドネオン弾き ~またの名を死にゆく、ろくでなしのタンゴ~

作者: 黒実 音子

1.

「おお、兄弟達!! 

俺は死んでいく

何という、ろくでもない人生だ!!

信じていた者の裏切りで

俺は死ぬのだ!!

ナイフで切り裂かれ、打ち捨てられたのだ!!」



おお、悪友共!!

俺が死ねば、せいせいするイカサマ師共

困惑し、あざ笑う女共

俺はここで死んでいく!!

頭の悪い野良犬のように


俺達は今更、神の歌など歌わない

そんなものはタンゴにはないのだから

ヤクザ者が死ぬ時は、

ただ一人の女を想うだけだ

哀れな鴎が人知れず歌うのだ!!


ああ、俺のパロマ!!

俺のペルカンタ!!

わかってくれ、俺は行く

料金のツケを支払う時が来たのだ

行かねばならないのだ

ゴロツキには皆、いつか行かねばならない場所がある

懺悔も後悔もせずに

誰も知らない路地裏で死んでいく

そんな魂にこそふさわしい場所へ



**********************

ああ、その時!!

その時、俺はパレルモの酒場の幻を見るだろう

そこでは俺達はタンゴを踊る


今夜だけは 俺の最後の夜だけは

パロマ!! おまえは俺と踊ってくれないか?

下品な踊りとあざけらず 低俗な歌と罵らず


まるで祝福された裕福層の2人のように

ああ それとも昔の俺達のように

**********************



2.

「おお、街よ!!

俺を育てた貧困だけが巣喰った街

俺は今日死んでいく !!

笑うがいい 

俺の惨めで糞ったれな人生を!!

虫けらの様だと!!」



俺を理解する者などいなくていい

放っておいてくればいい

街よ!!もしお前に慈悲があるのなら!!

タンゴの奏でる音が

ろくでなしへの餞になる

そして、お前もまた哀れな者だ

巨大な者よ


ああ、パロマ!!

口惜しいとは思わない

本当は臆病者で、寂しがり屋な

伊達男が幕を下ろすだけだ

お前にだけ見せた悲しい少年が

ようやく救われるのだ


**********************

ああ、その時!!

夢を見せてくれ、パロマとの夢を


はるか昔、俺を愛し、叱り、

今は俺の知らない世界で暮らす

あの女の夢を


ああ、パレルモの夕日が沈み 

それに包まれていた2人を!!


道ははるか昔に別れ、

あの時、俺達は互いの帰路へ!!

二人の冒険は終わったのだ

**********************


**********************

ああ、それでも!!

俺はパレルモの酒場の幻を見るだろう

そこでは俺達はタンゴを踊る


今夜だけは 俺の最後の夜だけは

パロマ!! おまえは俺と踊ってくれないか?


下品な踊りとあざけらず 低俗な歌と罵らず

まるで祝福された裕福層の2人のように

ああ それとも、どこか別の夢の俺達のように

**********************



「おお、兄弟達!! 

俺は死んでいく

何という、ろくでもない人生だったことだろう!!

全てが消え、幻となっていく


だが人生とは、常に賛美され、祝福され、

詩を書き、祈りを唱えているだけでは、

主の元には行けぬものだ・・・」

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