トラックドライバー
河田晃は長距離トラックのドライバー。
会社に命じられれば、全国どこだろうと荷物を運ぶために運転する。
車内はある程度まで好きに弄ることが出来たが、河田のトラックは綺麗なもので、よく同僚に女でも乗せているのではないか、と噂されていた。
しかしそれは自分を小馬鹿にしたものであることを、河田は知っている。
河田は醜い。
肌はまるで水を欲する大地のように荒れ、大きな鼻は上を向き、おまけに目は豆粒かと疑う小ささだ。
これで女が寄ってくるのなら、少子化など問題にはなるまい。
季節は冬――
河田はこの季節を待ち侘びていた。自分への褒美がもたらされる季節。
始まりは三年前。今でも河田はあの時のことを鮮明に思い出せる。
そして下半身が熱くなるのだ。
どんな犯罪においても最初の興奮が忘れられず、人はまた同じ犯罪に走るのではないかと考えたほどだ。
あの日、河田は中国地方への配送の帰りだった。
朝方に本社のある東京に戻るルート。
あまりの渋滞に一般道へ降り、広い駐車場のあるコンビニにトラックを停め、熱い缶コーヒーを握りしめていた時だった。
車内から、外を足早に駆けていく学生服の女が目に入った。
そういえば、今日はセンター試験だとラジオが言っていたな。
普段ならその程度で目を逸らし朝飯にするところだ。
が、女の子は慌てているらしく、足を滑らせたのを見て、河田はちらと時計を見る。
遅刻しそうなのか。
ただの親切心だった。トラックに乗せ、会場まで送るだけ。
幸い車内は綺麗にしてあるので、急いでいるのならば快く乗るだろう。
自分の顔が人を不快にさせることは知っていた。
だから、この時河田は本当に、ただ親切心から動いた。
急いで車から降り、声を掛ける。
女はどうしようか迷っていた様子だったが、結局頭を下げ、トラックに乗った。
外は雪がちらついていたからか、車内に戻り河田の顔を見た女は小さく悲鳴を上げ、車から降りようとした。
それを河田は背中から殴りつけた。
人に顔のことを何と言われても動じないはずだった。
幼少期から今に至るまで、河田は我慢しつづけ、ついには何も感じなくなった、はずだった。
恐らくは自分の親切心を裏切られたことに対して腹を立てたのだと思うが、もうそんなことはどうでもよかった。
妖精のように可愛らしい女が助手席に倒れているのだから――。
女は好きなだけ蹂躙し、地方へ行ったついでに殺して山に埋めた。
そして今日――センター試験当日。小さな目を光らせて河田はトラックを走らせる。
試験時間に遅れそうで、慌てて走る非力な女を探して。