俺はライダー!
平成ライダーの変身を見ていて思いつきとノリで書いた駄作です。
それでも構わないとおっしゃってくれる読者様だけご覧ください。
土煙が立ち昇り、轟々と風が吹き荒れる一面の荒野。雲ひとつない空には2つの太陽が浮かび、燦々と日の光を地上へ降り注がいていた。
そして荒野には対峙する2人分の人影。赤い髪と金色の瞳を持つ熱血漢そうな少年は、その身に竜の紋様を施された金属鎧を纏い、円盾と美しく輝く両刃の長剣を構えて少年の前に立つ青年へと向けていた。
そして現在剣を向けられて少年に対峙している黒目黒髪の青年は……素手。武器を何1つとして持っておらず、身に纏っている物も普通のジーパンにチェックのワイシャツだ。……いや、この世界ではその格好は充分に普通ではないのだが。
「……なあ、止める気はないか?」
青年は曖昧な笑みを浮かべ、死んだ魚のような目を少年に向けて問いかける。見る人が見れば気づいただろう、「あ、社畜の顔だ」と。
だが、少年はそんなものは知ったことではない。キッ、と青年を睨みつけると剣を構え直して声を張り上げた。
「その邪悪な笑み、深淵のような瞳、2度と浮かべることが出来ないようにしてやろう!」
「いや、だから話を聞けって……」
「問答無用! 行くぞ、魔人め!」
雄叫びをあげながら剣を振り上げ急速に近づいてくる少年を眺め、青年は溜め息をつく。凄まじいスピードで迫ってくる少年はあと数秒もしないうちに自分を切り捨てるだろう。
もう一度「はぁ……」と溜め息をつくと、青年は諦めたように右手を前に突き出し左手を腰に当てた。その姿は、まるで…………
「変っ身っ!!」
そう言った直後、腰に当てていた左手を起点に腰に金属質のベルトが現れ、青年の身体を光のラインが覆う。
『Transformation!』
ベルトから機械的な声が響き、青年の姿は変わってゆく。黒いライダースーツの上からボディーアーマーやフルフェイスヘルメットのようなモノを身に纏っていった。
その様子に危機を覚えたのか少年は全力をもって剣で青年へ切りつけた。しかし、その斬撃は光に阻まれて青年に傷をつける事は出来ない。
そして剣で切りつけ一瞬動きが止まった少年に向かって変身を終えた青年の回し蹴りが炸裂する。
ズドンッ! と凄まじい音が鳴り響き、青年の軸足が地面にクレーターをつくる。少年は蹴り一発で10メートル以上を吹き飛ばされた。
「ぐっ、かはぁっ! くそ、卑怯者めが!」
血を吐きながら少年は青年を睨みつけながら卑怯だと糾弾する。が、対する青年はフルフェイスヘルメットに包まれ表情は分からないが呆れた声で言った。
「いや、先に仕掛けてきたのお前だし俺は正当防衛だよな?」
「魔人め、貴様の好きにはさせんぞ!」
「ええい、話を聞けって言ってるだろうがぁっ!」
再び剣を振り上げ急速に接近してきた少年を青年は拳で捌きつつ時折反撃を加えていく。しかし少年はその全てを卑怯だ邪悪だと糾弾し、剣を大きく振り上げた。
「聖なる炎を裁きを受けるが良い! 聖炎の斬裁!!」
魔力撃と呼ばれるこの世界特有の魔力を使った魔法と物理の両方の特性をもつ強力な攻撃が青年へ迫る。
「ふんぬっ!」
ぶおっ!と拳が空気を切り裂いて暴風を起こし炎を全て吹き飛ばす。少年も暴風を受けて体勢を大きく崩した。青年はビシッとポーズを決めて腰を落とす。
「くっ、勇者たる僕が負けるわけには……」
『Finisher!』
「ライダァァ……キィーーック!!」
地面を蹴りつけ空へと舞い上がった青年はビシッとポーズを決めたまま必殺の跳び蹴りを少年へ叩き込む。派手な謎のエフェクトがかかり、吹き飛ばされた少年は地面に落下すると同時に爆音と炎に包まれた。
青年はビシッと再びポーズを決めると変身を解除し、そしてその場に膝から崩れ落ちた。
「あぁぉぁぁあっっ!!!? またやっちまったぁぁぁあ!!」
_| ̄|○ のようにorzのポーズになった青年は後悔とともに涙を流しながら自分をこの世界に連れ込んだカミサマに呪詛を吐く。
「俺は、魔人じゃなくて仮○ライダーなんだよぉぉぉっ!」
ーーこれは性格の悪いカミサマに異世界へ拉致され「魔人」として勇者に付け狙われる1人の仮○ライダーの物語である。