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川にまつわるショートミステリー  作者: たろ みい
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あのひと

「川」

日本の原風景にある「川」

「川」にまつわる少し不思議な小話を書いていきます。

少し怖いかもしれません。

あのひとは、川の近くに住んでいたんだと思う。

この川は、大きくて、向こう岸の人の顔なんて見えないくらい広い。

あのひとは、いつも川のそばの遊歩道を、川に沿って歩いていた。

ぐるんと曲がった道があって、あのひとが見えなくなるまでいつも眺めるのが私の日課だった。


私は遊歩道は歩かない。虫がいそうだし、なんとなくどんよりしているし、ううん、何より降りるのが億劫だ。

私はいつも自転車で遊歩道をぼーっと見ながらゆっくり通り過ぎる。

犬の散歩をしている人、ジョギングをしている人、野球部と思われる少年たち、ベンチに座ってお弁当を広げるサラリーマン。

あのひとは私の中ではそういう人たちに溶け込んでいないように見えた。

あのひとはとても目立っていた。だからあのひとは特別な存在だった。

そういえば私は不思議と川は見ない。

理由は考えたこともないが、それはきっと川に変化がないからだろう。

想像できることは目にはなかなか入らないのかもしれない。


あの日はたまたま川に目がいったんだ。


―――あの日、川から腕が見えた。

こういう不思議な体験をすると、意外と冷静に観察することができるらしい。

その腕は固まっていて、きっと死んでいるんだと思った。

今思うと恐怖と困惑とでパニックになりそうだが、そのときは驚くほど冷静だった。

腕しか見えなかったが、私は直感で分かった。

その腕は、あのひとのものだということに。


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