010 アキヅキのエレオノーラ
消息を絶った桜童子とシモクレンが、次に姿を現したのは<ハイザントイアー峡>に作られた特設キャンプ場だ。
ここには<パンナイル>お抱え軍師龍眼がいる。<火竜のすり鉢>から東へ転戦し、<ナカス>の使者を煙に巻いている最中だ。
実際のところ、龍眼の狙いは<フォーランド>と<バスケタ>沖諸島にある。だから龍眼は無意味といえる戦闘を繰り返している。ただし、ドロップや希望する<大地人>兵士の熟練など見返りも確かにある。だがそれは本来の目的ではない。
ここに桜童子たちが訪れたのは、礼を言うためだ。
「俺の情報が役立ったかね。兎耳のエレメンタラー」
「ああ、重要にして重大な情報だねえ」
「うまくいったかね」
「あまりうまくいきすぎれば、おいらは<ナインテイル>を地獄へ突き落した張本人ということになっちまうねえ」
薄暗い校舎跡の教室に龍眼はいた。机の上に腰掛ける龍眼の表情は疲れているように見えた。転戦の影響もあるのだろうが、秘密を一手に抱えているというのも疲れの原因かもしれない。
だから旧知の桜童子の登場には少し気が楽になるのだろう。
「畑でタマネギとニンニクが枯れているという情報で君が動くとはね」
「重要だからこそ龍眼さんがおいらまで情報を回した。いや、重要だとはわかっていたが、使者が張り付いて自由になれない龍眼さんにとって、おいらたちしかそのキーワードで動けるコマがなかったってわけだな」
龍眼は愉快そうに笑った。
「どうやって味方につけたんだ?」
「最初はおっかねーくらい敵状態だったさ。そりゃあもう、話すら聞いてもらえなかったよ。だけど、まあ運がよかったな。敵の敵は味方ってやつさ」
「ほう。で、次はどこへ行くんだい?」
「これから三つの勢力に会わなきゃいけねえなあ」
「それは?」
「一つ目は<アキヅキ>」
「滅亡したというのがもっぱらの噂だがな」
龍眼は口を曲げる。
「家臣たちのほとんどは散り散りになったしねえ。滅亡っちゃあ、滅亡だな」
桜童子も同じような表情を浮かべた。
「だが、領主の娘がいる。<不死者たちの騒乱事変>の頃、ライブライト公がお会いになられた。それに三十人程度の<冒険者>もいる」
「エレオノーラ嬢だな。まだおいら会ったことないけどな。おいら気になっていることがあるんだがね」
桜童子は頬に手を当て首をかしげた。
「そんな名前だったっけ」
ゲーム時代、<ナカス>をプレイヤータウンにしたものは、序盤で<アキヅキ>の姫にクエストをもらって報酬を得たものだ。桜童子はその当時、既に経験値上限に達していて、初級クエストにあまり用がなかったのだ。
龍眼はあとで話すことにしようと言って次の行先を尋ねた。
「二つ目は<廿鬼夜行>」
龍眼は目を細めた。
「<ナカス>周辺のレジスタンス組織じゃないですか。武闘派で知られる」
「あそこもずいぶん離合集散を繰り返して今の<廿鬼夜行>になったって言っていたね。昔は50人近くいたらしいけど」
「<Plant hwyaden>が<ナカス>を占拠するまでは、か。もう君のことだから味方にするための手は打っておいたんだろう?」
「買いかぶっちゃいけないねー。おいらはこれから手を打ちに行くんだよ。まあ、バイトってのはするもんだねえ。でもまあ、そのときのことを向こうが貸しだと思ってくれてればいいんだけどね」
「ほう、<火雷天神宮>の知り合いでしたか」
「まあ、一方的にぶん殴っただけだけどね」
桜童子と龍眼が笑いあうのを、シモクレンは離れた位置で見守る。
これが男同士の友情ってやつなんやろうねとため息をついた。
「で、もう一つは?」
「三つ目は<リューゾ>家」
「ほう、<九大商家>のひとつですか。あそこは<パンナイル>とは仲が悪い。<リューゾ>は、<ドラゴンメイカー>の直系の分家。<リューゾ>にしてみれば、<リーフトゥルク>は一族から土地を奪った裏切り者ですからね」
「だからこそ、龍眼さんも手を打っているのでしょう」
にやりとする桜童子に龍眼は目を閉じて両手を広げた。
なす術なしといったところか。
「ただ、この二つの商家の橋渡しをしようとする人物がいる」
龍眼は細い目を開いた。相変わらず威圧感のある目だ。
「ああ、おいらもそのつもりで<エイスオ>に行ったんだがねえ」
「え、にゃあちゃん、菫星さんに会いに行ったんやなかったの?」
シモクレンも話に加わる。
「思ったよりも小手鞠が老エルフ寄りで、菫星さんに会うには都合が良かったんだけどねえ。姫巫女さんには会えなかったんだ」
「姫巫女?」
シモクレンの問いに龍眼が答える。
「結びの姫巫女、カリステア=カルファーニャ。普段は物静かなエルフの巫女だ」
「龍眼さんも会ったことがあるんですか?」
「ああ、ライブライツ公についていたときな。彼女は商談をするわけでもなく情報交換をする。そのためだけにやってくる。彼女は<九商家>の絆を結ぼうとしている。彼女の狙いはただそれだけだ」
桜童子はため息をついた。
「諸国漫遊中というわけか。小手鞠か龍眼さんの伝手があれば、会えるかと思ったんだけどねえ」
「力になれなくて済まないな」
「いやあ、龍眼さんには、<Plant hwyaden>が<猫妖精族>の封じ込めに失敗した場合、<ナインテイル>一円に勢力を広げるのを食い止めてもらわなきゃなんねえからな」
桜童子が消息を絶ったのは、<猫妖精族>の隠れ里近くに軟着陸したためであった。
<猫妖精族>は人類を悪の種族とみなしている。タマネギとニンニクを嫌うので、畑の野菜でそれだけ枯れ始めたら<猫妖精族>が侵攻を始めたと考えてよい。その辺りでは<大地人>の神隠しも多数報告されることになる。
龍眼はその状況を発見し、桜童子に連絡を取った。
桜童子はこの危機的状況を生かすアイディアをもっていた。
<猫妖精族>の拠点を別の場所に移すように進言することである。
<猫妖精族>は、地上に出現するときに、ギルドハウスの扉のように異空間につながるドアを作る。そこを最初の拠点にして地上に機械の塔を造りはじめる。これが完成してしまえば、簡単なことでは<猫妖精族>は排除できない。
ただし、<猫妖精族>には天敵がいる。<黄紋豹鬼>である。
この地に塔を築くということは<黄紋豹鬼>の縄張りを犯すということでもある。だから桜童子がもっといいところを紹介するというわけである。
すんなり話が通ればよいのだが、そもそも悪の種族と思われているのである。さらに桜童子は兎耳を持ってはいるが<猫人族>であり、<尻尾なし>として侮蔑される対象であるため、交渉に持ち込むこと自体が容易ではない。
桜童子たちとシモクレンの第一次遭遇が、<猫妖精族>からの盛大な攻撃であったのは言うまでもない。
だが、桜童子たちは待った。自分たちは友好を図りたいのだという意志を告げながら、時機を待った。
結果からみれば桜童子たちは半日で交渉を成立させている。スピード解決と言える。桜童子自身もここに二日以上かかるとみていた。
この迅速な成功の裏には、桜童子のエンカウント異常が関わっているとしか考えられない。
待っている間に、天敵である<黄紋豹鬼>の大軍勢が現れて、<猫妖精族>との抗争を始めたのである。<猫妖精族>は終始劣勢であった。
戦局をひっくり返したのが桜童子である。
<黄紋豹鬼>を半数まで減らしたところで、互いに兵を引かせた。桜童子は<猫妖精族>にとってのホワイトナイトとなったのである。
「我々<尻尾なし>は<猫妖精族>殿を迎え入れる用意がある。場所は<天空庭園>! これにより<黄紋豹鬼>殿の領域は安堵されるであろう! この案を受け入れぬならば、我々は微力ながら<猫妖精族>殿のために最後の一匹となるまで戦い続けることをここに誓おう!」
<黄紋豹鬼>が撤退したことで、ようやく<猫妖精族>は対話ムードを見せた。
「やい、<尻尾なし>。そなたが先ほど申していた<天空庭園>とはいずこにある。申せ、苦しゅうない」
音楽の教科書にでも出てきそうな鬘をかぶった猫妖精の貴族が応対した。
「は。<天空庭園>とは、神代には都市高速と呼ばれた場所。現在は明るく水利もよいため、巨大な空中庭園となっております。生息するのは<歩行樹>や<桂花麗人>たちばかり。貴族様におかれましては何の造作もございますまい」
「うむ。造作もない」
「遠からぬ場所には<大地人><冒険者>の集まる地がございますが、<天空庭園>はその名の通り高い場所にございます。貴族様の指より放たれる光輝の魔法を使えば容易に退けられるものと」
桜童子は長年研鑽を重ねた<召喚術師>である。<猫妖精の侵略貴族>のことは熟知していた。自らの塔を持たぬ子弟ならば、本拠地を離れて塔を造りに行く。先ほどの抗争がなければ渋ったかもしれないが、良い場所と聞けば行かぬ理由もない。
「して、その<大地人>や<冒険者>どもが多くいるというのはなんという村か」
桜童子は居住まいを正していった。
「<ナカス>にございます」
周囲がざわつく。
「あい分かった。相手にとって不足なし。このロンバルディア公が三男、マスカルポーネが<天空庭園>に塔を築く!」
■◇■
<猫妖精族>との交渉に成功し、龍眼との面会を終えた桜童子たちは、<アキヅキ>に飛んだ。
先ほど、龍眼から<アキヅキ>にまつわる噂を聞いた。
<アキヅキ>の若き領主は行方不明である、と。
<ナカス>が占領され主家が滅ぼされたことで、<アキヅキ>を継いだ若き領主リチュア=クォーツは後ろ盾を失い、ある日失踪したというのだ。
家臣たちも難を逃れるように散り散りになった。しかし、<アキヅキ>の街には村人たちが残っている。誰かが彼らをまとめていかねばならない。
そこで登場したのが、<コショ>の山に庵を結び、祭事を行いながら隠し谷を守護しているという姫巫女だった。
その姫巫女は、リチュアの一つ下の妹で、リチュアの生き写しのようであるらしい。それがエレオノーラである。
彼女を起用したのが中学生<冒険者>カーネリアンだった。彼女は<ノーラフィル>ほか三十人の<冒険者>とともに<アキヅキ>の街に移り住んだ。そして、エレオノーラとともに<アキヅキ>再興を目論んでいるのだという。
「一番近い大きな街のことやのに、ウチら全然知らんかったねえ」
「おいらたちが<アキヅキ>のことを耳にするのは<ノーラフィル>たちからによるものだけだろう。ニュースなんてないからなあ。でもおいらは、あのノラ四兄弟から受ける印象と龍眼さんから聞いた話に温度差があるように感じるんだ」
「温度差?」
「滅亡したというわりに、<アキヅキ>は前と変わらず存続しているような印象を受けるんだ」
「それはたしかに」
「で、<ナインテイル>以外の<冒険者>にも連絡とってみたんだ」
「早苗さんとか夜櫻さん? あと、西武蔵坊さんとか?」
「ああ、他にも浮世さんとか」
「女子率高すぎ」
「しょうがねえだろぅ。知り合いすくねえんだから」
太ももでギュウギュウ締め上げるシモクレンの脚をペチペチと叩き返す桜童子。
「で? なんて言うてはったん?」
「<アキヅキ>は滅亡して再興を目指してるってな。そんな噂が流れているらしい。おいらたちの知らないところでな」
エンカウント異常のせいで鳥型モンスターに囲まれてはいたが、攻撃性が高くないのでずっと一緒に飛んでいたが、<アキヅキ>が見えてきたので<鋼尾翼竜>の高度を下げると自然と離れていった。おそらく竜の起こす空気の渦に乗って飛行することで羽休めをしていたのだろう。鳥型モンスターの群れに手を振って山の裾野に降り立つ。
<アキヅキ>への入り口である。
<アキヅキ>は桜の名所である。居城に至るまでの道の両脇は春色に染まり空を見上げると先ほどの真っ青な空がどこかふんわりとした色合いに感じられる。
さすがにここではエンカウントが低く設定されてあるのだろう。桜童子たちも安心して道を歩ける。
斜面がゆるゆると続く中に、<大地人>たちの営む店がある。<アキヅキ>の代表的な産物アキヅキアンティークだ。なぜかしら、どこかしらレトロさを感じさせるデザインをもった装備品や家具、宝飾具たちが店先に並ぶ。
大概、宝飾具といえば首飾りや腕輪、耳飾り、もしくは冠なのであるが、ここで売られているものはバッジもあった。中にはほっぺたが赤い男の子が描かれていたり、浴衣の女性が描かれていたりして、全く中世っぽくないところが逆に魅力であるらしい。
人によってはコンプリートを目指して大量に買っていくものもいるそうだ。装備としてみても軽くてかさばるものではないため、能力上昇には便利アイテムだろう。ただそれぞれ効果が微弱なので、十個付けたところでHPが一パーセント上昇するのがやっとだろう。ただ効果に違いがあるので、掘り出し物めあての客もきっといることだろう。
「全然滅亡感ないんだけど」
満開の桜の中、<大地人>だけでなく<冒険者>も多く集まっている。
「ここ、寄ってっていいかい?」
桜童子は一軒の道具屋に寄った。そこには魔法鞄が売ってあった。
魔法鞄は大概クエストで獲得するものであり、こうやって店先で買うことはあまりない。一般的には、<鋼尾翼竜>の革をアイテムとして獲得したら革なめし職人に卸す。なめした革を革細工職人が鞄に仕立てる。それを買い取るのが入手の流れである。
その時の金額に比べれば、二桁違うのではないかと思える値段設定だったが、桜童子はナップザック型の魔法鞄に手を伸ばした。といっても手が届かないから店の主人に取ってもらった。
「青と茶色やね。色違いが欲しくなったん?」
「まあね、草食と肉食なんて言うなよ。かわいそうになってくる」
「自分で言うてるやん。じゃああれやね、金属なめしか、植物なめしか」
シモクレンがそう言うと、<大地人>店主が楽しげに話しかけてきた。
「さすがお客さん。御目が高い。この鞄、アタシが革をなめしたんですぜ。そりゃあなめしには自信があります。この色、艶、弾力、いいでしょう。まあ、アタシゃあ革細工職人じゃないから不格好は不格好ですけどね。ホラ、こうすると口がガバッと開くなんてのは、並の革細工職人だったら思いつきもしないでしょう。だから、何でも入れられるってのが売りなんです。どうです、値段以上の価値を感じるでしょう」
そもそも、魔法鞄は入れられるものにおおよそ制限はない。大きさによって容量に限界はあるものの、リュックサック型ならテントだって入るし、水筒型なら砂漠を旅するのにもそうシビアに考えずにもずっと気楽に給水できる。
主人の気質なのであろう。ナップザックのフレイバーテキストにさえ「何でも入れられる」と書いてある。
「じゃあ、ご主人。青と茶色ひとつずつ」
「毎度!」
主人の満面の笑みと財布係のシモクレンが渋い表情が好対照だった。
「ウチも無駄遣いするもんね、にゃあちゃん来ちゃダメ」
そう言ってシモクレンはぬいぐるみ屋に入っていく。
いたずらっぽい表情で戻ってきた。
「何か買った?」
「内緒!」
シモクレンはどうやらすっかり春爛漫のお花見デート気分であるようだった。
「そろそろ領主に会いに行きたいんだけどなー」
「にゃあちゃんやんか、最初に寄り道したんは」
店の並びから、武家屋敷のような家々の並びに変わっても、桜並木は美しかった。桜童子たちは<大災害>以降<アキヅキ>に足を踏み入れるのは初めてだったが、迷わず領主の居城を目指していった。一番高いところを目指せばいいのだ。
実にヤマトらしいと桜童子は感じた。塀で集落を囲み城が民を守る発想ではないのだ。民は一番外郭にいて、次に戦闘員、一番高いところに象徴としての王がいる。人対人ならまだしもモンスターからの防衛はどうするんだと言いたいところだが、そもそも出現率が低いのだ。心配することもないのだろう。民から遠いところにいる領主。
だからこそ成功するトリックもあるのだろう。
居城につくと、入口の<冒険者>に案内され、たやすく姫巫女に対面することができた。
広間には意外な面子が揃っていた。
「いやー、エルダーメイド殿の仰る通りにゃっすねー。三日もかからなかった」
<パンナイル>の配送猫、<黒猫配送サービス:ニャン急便>のクロネッカ=デルタが同席していた。
正面に座るのは、代理姫御子だというエレオノーラ嬢、その横に<エルダーメイド>カーネリアン、右手にクロネッカ=デルタ、そして左手には<エイスオ>の姫巫女カリステア=カルファーニャが座っていた。
「デルタくん以外ははじめましてかな、みなさん。腰をかけても?」
カーネリアンは軽く腰を浮かして、桜童子たちにソファを勧めた。
「あなたの活躍はパンナイル様からも聞いていますよ」
エレオノーラは、花が咲いたような柔らかい笑顔をほころばせた。
「そいつはどうも。ひょっとしておいらの動きも読んでいたのかい?」
寡黙な姫カリステアは桜童子をじっと見てから、小さく頷きカーネリアンを指さした。カーネリアンは真顔でピースしてみせる。
桜童子は考えた。事が漏れていたのなら計画は失敗に終わる可能性が高い。
見たところ中学生程度の少女のようだが、この世代特有の鋭さによるものなのか。それとも情報が漏れてしまっているのか。
桜童子は目を閉じる。
イメージの中では先ほど見た情景と変わらない世界が広がっている。そこに座るカーネリアンからもやしのように線が飛び出て、エレオノーラにつながるとストレートラインになった。エレオノーラからカリステアにつながる。同じ線は自分からも出ていて、隣のシモクレンやポップアップされた【工房ハナノナ】や龍眼たちの顔にもつながる。
桜童子は<画家>である。情報の再現力はもとより高い。それを分析処理したり出力したりするときには、論理的に行うよりも視覚的で概念的に行う方が断然早い。
「クロネッカさん。ひょっとしてユイから何か預かってないかい?」
クロネッカがハッとした表情を浮かべた。ポップアップされたユイの顔からラインがクロネッカにつながった。そこからカーネリアンに伸びた。
情報が漏れたわけではないと桜童子は判断した。なぜならユイにすら計画を話してはいない。ユイが三日でここに来ると判断し、それをクロネッカに伝えたのだろう。カーネリアンはクロネッカの話から桜童子がここに訪れる目的と過程を推測し、三日も必要ないと判断し、クロネッカをとどめおいた。
「カリステアさんもおいらに何か言いたいことがあるんじゃ?」
軽く目を伏せたところを見ると図星だ。カーネリアンは桜童子に用があるカリステアを呼び寄せたというわけだ。頭の中に幾何学模様の<│情報の樹形図>が完成した。
「危ないねえ。全部お見通しだと信じてしまいそうだったよ」
「わたしまだなんも喋ってないっす」
ピースし続けているカーネリアンは、そのままニッコリと笑った。
「ただ問題は」
桜童子はソファに深く体を埋めながら言った。
「みんなしゃべりたいことがいっぱいで誰から話を切り出すか、だな」




