4-1 田上秀人の思い
第四章 夢の終わり
本当はさ、キャッチャーなんてやりたくなかったんだよ。野球の華といえばピッチャーだろ。だから俺はピッチャーをやりたかったんだよ。
ま、どうしようもなく小物な俺は、全員の視線が一斉に集まることに耐えきれなくて、すぐに諦めたんだけどな。
それでもさ、キャッチャーなんて最悪だよ。
だってさ、防具は重たいし、試合中はずっと中腰だからめっちゃ疲れるし、ピッチャーが暴投したときなんて身体を張って止めないといけない。
防具があるとはいえ、時速百キロをゆうに越えるボールが身体に当たるんだから痛いに決まっているだろ。
しかも、ピッチャーが打たれたときにはキャッチャーのリードが悪いと批判されることもあるしよ。ピッチャーが抑えたときにキャッチャーが褒められることなんてほとんどないのにな……。
やっぱりキャッチャーてのは、割に合わないポジションだよ。どこまで行っても投手の影でしかないからな。
しかも、全然言うことの聞いてくれない投手だっているしな。そういう投手のときは相手に波長を合わせるだけでも一苦労だ。
でもさ、そんな大変なポジションだからこそ生まれる楽しさってのものあるんだよな。
それに自分より凄いヤツを見ると、そいつを支えるという役割をしているだけでも、自分まで凄くなったと錯覚できる。
さっきも言った通り、俺って小者だから、キャッチャーをやっていて、そういうところで喜びを見出したりしてたんだよ。
だから俺はアイツのキャッチャーを続けていた。
でも高校に入ってアイツがいなくなったのにもかかわらず、俺はキャッチャーを、そして野球を続けている。
――なんのために?
さあ、俺もさっぱりだ。目的なんてとうになくなってるのにな。
まあ、別にすべてのことに意味を見出す必要なんてないとは思うけどな――なんて言ってはいるが、答えなんて、もう出てるんだけどな。
俺は前に立って誰かを引っ張っていくタイプじゃない。そいつの影で、そいつを支えながらひっそりと生きることこそが、小者な俺にぴったりなんだ。
――あんたもそう思うだろ。




