【15】再戦、魔王四天王
――――勇者ジル、聖女アンジュ、俺は16歳に成長していた。
レベルも上昇し俺:レベル300
ジル:レベル192(勇者補正+30)
アンジュ:レベル132
クロウ:レベル210
となりバックアップ隊もレベルが上昇しており、さらに強力となった。
簡単におさらいすれば。
クレア(狐耳しっぽ):レベル210
ローウェン(剣聖):レベル3100
ナル(ネクロマンサー):レベル600
ルキ(先輩構成員):レベル920
キール(保護者):レベル5200
――――と言った感じだな。
「それでね、孤児院の子どもたちと一緒にお菓子作りをしたの」
アンジュが嬉しそうに語る。その孤児院とはルディさんの育った孤児院でもあり俺の管轄下。
「それで、これがお裾分け!」
アンジュが俺たちにもクッキーを分けてくれる。
「ありがとう、アンジュ」
「えへへ、どういたしまして!」
アンジュは混魔の子どもたちだからと差別したりなどしない。やはりアンジュはなるべくして聖女になったのだ。
「うん、美味しいよ。子どもたちのためにも強くならないとな」
そう頷くジルは背丈も顔立ちも実力もかなり伸びたと言えよう。
そしてこちらも混魔だなどと気にはしない。だからこそルディさんとの訓練にも真剣に取り組んでいる。
「みんな、新たな情報が入ったわ」
クレアがクロウと共にやって来る。
「どうしたの?クレア」
「アンジュ、ジルとデイルも心して聞いて。魔王四天王が近くの街に迫ってる!」
ルキからの情報だな。俺も念話でキャッチした。
「それは大変だ!すぐに助けに向かおう!」
「ええ、ジル。あちらでローウェンとルディとも落ち合えるわ。急いで向かいましょう!」
「ああ!」
今のジルにはかつてのような迷いや気弱さはない。すっかり勇者としての顔立ちに変化した。
※※※
――――魔王四天王が迫る街では既に避難が始まっていた。
「クレアとアンジュはバックアップと怪我人の治療をお願い」
「ええ、デイル。任せて!」
アンジュの顔立ちも大人びたものへと変わっている。
今は避難誘導係ではない。パーティーをバックアップしてくれる頼りになる一員だ。
(ルキ、ナルは彼女たちの援護を)
((了解))
(それからルキ、四天王の情報を頼む)
(了解した)
「やぁ、みんなぁ。お待たせー」
「おい、お前はもうちょっと緊張感を持て!ローウェン」
「ローウェン、ルディさんも到着しましたね」
ローウェンとは常に連絡を取り合い、俺の管轄下に入ったルディさんも今回の強襲を受けて召集させていただいた。
「みんな、ギルドからの情報だ」
間違ってはいない。ルキが裏経由で仕入れた情報である。
「敵の魔王四天王は以前倒した四天王の欠員として補充された第4席」
「以前の戦闘では役に立てなかったけど、今回は違う」
「そうだな、ジル。前に立つのは勇者のお前だ」
「デイル……!」
「勇者としてたくさんの訓練、実戦を積んできたお前ならかならずできる」
「うん。必死で頑張ったんだ!」
勇者は勇者として成長を果たした。同時に魔王軍もまた力を蓄えてきたわけだが。
「負けてなるものか、必ず勝つ!勝って街を守るんだ!」
勇者の言葉にみんなが頷く。
「勝つぞ!」
『『『お――――――っ!!』』』
『ようやっと悲願が叶う!』
現れた四天王は前回と同じく女性型である。
『お前らへの怨み……忘れたことなどない!』
「怨みだと?何のことだ」
ジルが陣頭に立つ。
『忘れたとは言わせない!私のお姉さまを殺したのはお前たち勇者パーティーだろう!』
「まさか先代の第4席か?」
『その通り。誰が……誰がお姉さまのトドメを刺した!お前か、勇者』
「俺だよ」
名乗り出たのはローウェンだ。
『お前がぁっ!』
「俺に復讐したいのならまずは勇者を倒すことだ」
ローウェンもまたジルの実力を認めているからこそ任せるのだ。
「勇者も倒せないようじゃ、まだまだお前には俺を倒すなんて出来ないよ」
『何をおぉっ!?許せない許せない許せない!勇者……まずはお前を殺す!』
「かかってこい!」
ジルが剣を構える。
『さぁ……お前たち……勇者パーティーを壊滅させて、この街を恐怖で彩るんだ!』
「そんなことはさせない!うおおおおぉっ!」
『死ね……勇者ぁっ!そして私はお姉さまの敵を打つんだあぁぁぁっ!!!』
魔王四天王がジルに襲い掛かるが、その攻撃を見事に受けながら着実に四天王を追い込んでいる。
いいぞ……ジル!それでこそ勇者だ。
そして勇者パーティーに参戦する冒険者や街の自警団たち。
(俺たちもやるぞ。街を守るんだ!)
(((了解!!)))
『キッヒヒヒヒッ。お前のようなチビスケが相手とは、一瞬で捻り潰せそうだ』
目の前に現れたのは大きな牛の魔族である。
「身体の大小で決め付けるとは。たいした戦士ではなさそうだ」
こんな冷めた気分になると無性に思い出す。
俺も兄ちゃんの弟なんだって。
『このガキいいいぃっ!』
「終わりだ」
次の瞬間、マジックアクシズが牛魔族を容赦なく切り刻む。
『ギャアァァァァァァッ』
「ふん……ナメてかかったお前の落ち度だ」
「そうしていると本当にお前は……」
ルディさんがボソリと漏らす。
「でも俺はお前がいい」
「ならそう言うことで」
兄ちゃんには返さないでおく。返したところでもう興味はないだろうから結局俺のところに戻ってくる。俺は見捨てられないから。
牛魔族を屠れば素早くジルの元へと駆ける。女魔族にジルが畳み掛けているまさにその瞬間、その背後を取る魔族。
「ジル!」
即座に背後を取ろうとした魔族を屠る。
「背中は俺に任せろ、ジル!」
「ああ、サンキュー。デイル!」
ジルは女魔族に向かい合う。
「さぁ……トドメだ!」
ジルの刃が女魔族を穿つ。
『ギャぁ……あぁ……そんな……そんなぁ……お姉さまの、敵を……』
「それでも俺は人間の街を守らないといけないから」
ジルは精神的にも強くなったな。
女魔族の絶命と共に周囲の魔族たちも倒されていく。ローウェンとルディさんがいるのはもちろん、クロウやバックアップのルキ、ナルの活躍もある。
「治療が必要な方はこちらへ!」
「すぐに回復します!」
デバフやバフ支援をしてくれたクレアとアンジュの活躍もある。
アンジュは早速負傷者の救護に取り掛かる。あの子も強くなった。スタミナはもちろん精神力も。今では大怪我を前にも憶さず適切な治療を提供している。
後は……。
「ジル、終わったぞ」
「ああ……だけど、デイル」
「うん?」
「俺がこうして魔族を屠る度に、その家族や縁者が勇者を敵だと追ってくる。彼女のように」
「そうだ。戦いとはこう言うものだ」
「……」
「今さら恐くなったのか」
「ち……違う!」
ジルのまっすぐな目が俺を射貫く。
「こんな戦いじゃなくて……ほかの解決方法だってあったんじゃないかって」
「軍を率いて街を襲ってきた魔族たちに平和論など説くつもりか?」
「それは……」
「無理に決まってるだろ」
「分かってる。俺がそんな理論を振りかざしたところで止まる戦いじゃない。だから俺は魔王を倒さないといけない」
そう、そしてそれがイスキオスが求めている美しい世界の在り方だ。
「だけど……許されることなら。憎しみや悲しみは勇者の俺が背負っていい。でもこんな戦いを終わらせるための話し合いが出来ないかって」
「……」
確かにそう言うシナリオもある。企画書を作ることも出来る。だがあの魔王はそれを聞くだろうか?そもそもそれは勇者が魔王を倒して世界を救う……そのイスキオスの理念に外れるものだ。
「デイル……」
「お前がしたいなら試してみるといい」
「デイル!」
「だけど魔王に話し合いが通じなかった時は……分かるな?」
多分その可能性の方が高いだろう。
「うう……分かった」
「覚悟が出来てるならそれでいい。ジル」
「デイル」
「俺はジルがそうしたいのなら止めはしない」
「あ……ありがとう!」
(いいのか?)
ルキがボソリと念話を入れてくる。
(いいんだ。どうせあの魔王に話は通じない。それでジルが決意を新たにすれば全てこともなしだ)
(……確かにな。了解した)
(ああ)
俺は甘いのだろうか。
イスキオスの源流としてもっと世界の管理者らしくあるべきか。しかしながらそうなってはならないのだと言う警鐘も俺の中にはあるのだ。




