【11】冒険者ギルド会議
――――海の街アズール・裏ギルド2階。
さすがは滅多なことじゃ入れないギルドの2階。さらには裏である。
追放された街の裏ギルドでもお邪魔したことはあるが……これほど物々しい雰囲気ではなかったような。
因みに今回は保護者2人。
「ま……イスキオスなら割と常連……」
「ハッキングの件でですか?ルキ」
容赦ないな、ナル。
「……それも、あるな。あと禁忌魔法……呼び出し」
「うーん……私は死霊術で呼び出されそうですねー。昨日も墓地でちょこっと遊んでたので~~」
この2人は2人で物騒な空気に拍車をかけてるんだが。
「どうぞこちらへ」
明らかに人相の悪い案内係だ。しかし物腰がきっちりしているのは裏が表以上にそういうのに厳しい場所だからだ。不興を買ったらドンパチなんてこともあり得るからな。……俺はしないけど。
「よくぞ参られました、どうぞ」
出迎えた裏ギルマスも歴戦の猛者のような出で立ちである。
「こちらのモニターに繋ぎますので」
「分かった」
俺たちは仮面を身に付け、ギルマスも仮面を付ける。まあ裏ってあまり顔知られるのは不都合だし、騙れば大変なことになるのでやるやつはほぼいない。
「話には聞いてたけどほんとすごいよなぁ、テレビ会議」
「テレ……モニター会議ですか?」
ナルの言葉にハッとする。
「……そうとも言うな」
こちらにはテレビはないんだった。モニターはほぼ魔法で投影する空間モニターである。俺のパソコンも空間モニター製だしな。
モニターには参加者の冒険者ギルドのトップ連中が映し出される。
「そうそうたるメンツだな。知らないけど」
「ぷっ」
後ろでナルが吹き出したのが分かる。
「……中央にいるのが表の長アレンだ」
ルキがナルの頭をぺしゃりと叩きながら教えてくれる。
「ふうん……?貫禄ありそうなじいさんだ」
昔は歴戦の冒険者だったんだろうな。今では勇者から裏金をせしめるとは……何だか悲しいな。
そしてちらほら裏ギルマスの長もいる。顔の上半分を覆う仮面にその下は不気味なほどの笑みである。
「そろそろ音声も繋ぎますので」
「分かったよ、ギルマス」
ここからは気を引き締めないとな。
『みなさま、お集まりいただきありがとうございます』
実際に集まると日数がかかるからリモートだがな。むしろそれまで待ってられるか。
『今回は勇者パーティーの報酬の件ですが……』
『これは勇者への支援のためのギルドの正当な報酬だ』
『勇者の旅のために我々はどれだけサポートをしているか』
『にもかかわらず報酬を見直せとは、ギルド経営をなんだと……』
勝手なことをつらつらと……っ。
「では聞くが、ギルドは何をサポートした」
俺の言葉にそうそうたるメンツが注目する。しかし声が子どもであることで、一部ナメた視線を向けてくる。一応こっちでは成人しているが……規則上なだけなのでまだまだ年上の大人にはナメられがちだ。
『そう言えば……ゴルトと言うパーティーメンバーがいたそうだな』
『ギルドからの報酬をやりくりしていたと言う』
『我々はしっかりと彼に報酬を渡していた』
やっぱりそれを持ち出したか。
「ギルドと癒着しパーティーに寄生し苦しめた罪人にお前らは渡していたんだろう?」
『それは……っ』
「勇者は生まれ故郷の村を人質に取られ、聖女はゴルトからの理不尽な暴言や暴力から勇者や……デイルが必死に守っていた」
俺がそのデイルだと知るのは裏だけだろう。一応は表には隠しているものでな……。
「そんな誰かの助けを必要としている状況で、唯一何ものの権力にも従わない冒険者ギルドが加害者と癒着していたんだよ。なら勇者や聖女は何を頼ればいい?」
肝心な時に頼れるはずのギルドがゴルトと癒着していたら……もう誰も頼れない。俺が……俺が背を向けていた実家と向き合わなければ救うことができなかった。
「報酬のこともある。Cランクまでのギルドの手数料は1割、Bランク以上は2割だと言うのにギルドが8割も持っていく」
明らかに常軌を逸している。勇者だから許される?
勇者はギルドに搾取されるためにいるんじゃない。
「その上勇者と聖女の装備は初期装備だ。お前らの言うサポートとは何だ……?」
『だとしたら……そうだ!勇者パーティーには明らかに必要ないものがいるじゃないか!』
何を言い出す。表ギルドのトップが叫び出す。
『デイル・スキア。ヤツは初期装備じゃない!つまりは……ソイツが横領しているのだ!』
目の前にいるのが本人だと知らないのだろうな。さらには偽名の方しか知らないかぁ。あと俺の装備はイスキオスの経由仕入れたものでギルドからの金は一銭もねえぞ。
「証拠は?」
『平民で……さしたる後ろ楯もない!』
「平民なのは勇者だって同じだ」
あと後ろ楯は世界最強の秘密結社の総帥だ。
『さらにはジョブが斧使いだと……?戦士の方がましというものだ!』
どこが。そして誰が戦士よりもましだと?俺の本当のジョブは調べれば分かる。裏ギルドからの信頼があればだ。アイツらは教えてもらえないらしい。
「それが何だ?ジョブや身分が何の証拠になる」
『他に証拠などいくらでも……っ』
「捏造でもする気か?裏を出し抜いて?それとも裏がお前たちの味方をするとでも?」
隣の裏ギルマスも他の仮面のギルマスたちも空気が変わる。
――――裏をバカにするのも大概にするべきだ。
「俺の調べは裏ギルドが提供する限り。そこにデイル・スキアの名はどこにもない」
それを否定すれば裏ギルドは完全にそっぽを向く。
『裏切ったのか!』
それは裏ギルドに言っているのか?
『何か誤解をしているようですね』
口を開いたのは裏ギルマスの長だ。不気味なほどの笑みがさらに弧を描く。
『我らがいるのはあなたがたの不正を揉み消すためではありませんよ』
「その通り。裏があるのは裏社会に精通するためだけではなく」
『表が不正を働いた場合、それをただすのも役目なのですよ』
『同じギルドだろう!』
『我々は……裏、ですので。だからこそイスキオスの美学を瀆す行いの意味もよく知っている』
お前は特にな。俺は手元の資料に○✕を描いていく。
「~~♪」
気が付いているものたち……つまり裏がちゃんと情報をやっているほど信頼できると。だから○。
「あの……使者殿」
裏ギルマスが怪訝そうな表情を向けてくる。尤も仮面越しなのでそんな気がするためだ。
「うん?」
「そちらは?」
「上に出す報告書」
「……そうですか」
そうそう。イスキオスをナメてるやつら……ああ、もれなく裏金を受け取っているリストに名がある。コイツらは✕。もちろん裏は免除と。
そして送信……っと。
『……い、おい聞いているのか!クソガキ!』
「……」
クソガキねえ……。
ずいぶんとナメられたものだ。ま、ナメられる年齢たが。表ギルドのトップともあろうものが……。
その時、モニターがパッと切り替わり一画面となった。
『やあ、諸君』
口元ににこりと弧を描いている。裏ギルマスとは違う仮面の男に吹き出すところだった。隣の闇ギルマスと後ろ2人の緊迫感がなければな。
『ずいぶんとナメた真似をしてくれたようだ』
口元に笑みを称えてはいるが、あれは……怒ってるな、兄ちゃん。いや……総帥。裏の人間ならモニター越しでも背筋に悪寒が走る。
『我らの美学を瀆すものには制裁を』
これ絶対勇者の健全な冒険以上に俺をクソガキ扱いされたことへの制裁だろうなぁ。
『報いは受けてもらおうか』
彼らは言いたい放題言いすぎた。俺が会議に参加するんだぞ。……絶対両手叩いてニコニコ見に来るに決まってる。今は般若の笑みだろうがな。




