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ガラクタ令嬢は、石を宝石に変えて孤独な皇子と共に世界を買い叩く  作者: 月雅


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第6話 成り上がりと執着の気配


わたくしは、執務室で帳簿を閉じました。


心地よい重みの革表紙。

そこに記された数字は、この数ヶ月で跳ね上がっています。

王都の鑑定士ギルドに登録した「ダイヤモンド」は、瞬く間に貴族令嬢たちの心を射止めました。


「……順調すぎて、怖いくらいっすね」


ふと、前世の商売人の顔が顔を出します。

供給量を絞り、希少価値を高める戦略が当たりました。

今や、アステリア領産の宝石は「手に入れること自体がステータス」となっています。


この事業で得た利益は、すべて「商会資産」として管理しています。

公爵家へ流れることは一分たりともありません。

領地の再開発資金を除いた余剰金は、わたくし個人の口座へ着実に積み上がっています。


「お嬢様、お茶を。少し、詰め込みすぎではありませんか」


扉を開けて入ってきたのは、用心棒のリュカです。

彼はフードを脱ぎ、穏やかな手つきでカップを置きました。

健康的な顔色になったその美貌は、直視するのがためらわれるほどの破壊力です。


「ありがとう、リュカ。貴方も少し休みますか?」


「俺はいい。あんたの影にいるのが、今の俺の役割(仕事)だからな」


リュカはわたくしの椅子の背後に立ちました。

その距離が、以前よりも一歩近い。

守られている安心感と同時に、逃げ場のないような執着の熱を感じます。


(うーん、有能な社員なのは間違いないけど、最近ちょっと距離が近くないっすか?)


わたくしは照れ隠しに、机の上に置かれた彼の古い上着を手に取りました。

綻びを直してあげようとした、その時です。


内ポケットから、小さな金属片が転がり落ちました。

それは、精巧な細工が施された紋章入りの指輪でした。


「……これ、は」


わたくしの【真贋鑑定】が、瞬時にその価値を弾き出します。

材質は純度の高いミスリル。

刻まれているのは、隣国「レヴァン帝国」の皇室のみが使用を許される、双頭の鷲の紋章。


(……はい、確定っすね。隣国の行方不明の皇子様だわ、これ)


世界観ルールに照らせば、これは「公的権威物」に等しい物品。

他国で持っていれば、国際問題になりかねない代物です。


わたくしは指輪を拾い上げ、黙ってリュカに差し出しました。

彼は一瞬、息を呑み、紫の瞳を揺らしました。


「……見てしまったか」


「ええ。とても高価そうな指輪ですわね」


わたくしはあえて、その正体には触れません。

彼が皇子だろうと、行き倒れだろうと、今の彼には関係のないこと。

大切なのは、彼がわたくしと「労働契約」を結んだ、有能な社員であるという事実です。


「リュカ。これは貴方の『個人資産』ですわ。大切に保管しておきなさいな」


「……正体を聞かないのか? 俺が、恐ろしい国の人間かもしれないのに」


「わたくしが見ているのは、目の前の貴方の働きぶりだけですわ。それに、貴方を手放すのは、わたくしにとって大きな『損失』になりますもの」


わたくしが笑うと、リュカは片膝をつき、わたくしの手を取りました。

指先に落とされる、柔らかなキス。


「……あんたは本当に、欲の深い女性ひとだ。だが、そんなあんたに一生、買い叩かれていたいと思ってしまった」


彼の視線に、甘く重い色が混じります。

それはもはや、雇用主に向けるものではありませんでした。


(……おっと、これは契約以上の執着をされそうな予感っすね)


窓の外では、かつての岩山が「宝石の都」へと姿を変えようとしています。

富と、有能な(重すぎる愛を持つ)部下。

わたくしの成り上がりは、いよいよ止まらなくなってきましたわ。


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