5.
騎士が目を閉じ天を仰いだその時です。
ぎぃ、と音を立てて宮殿の扉が開かれました。
扉が開くと黄金の光があふれだしました。
美しい黄金の髪の、美しい黄金の瞳の女王が宮殿から出てきたのです。
「女王様だ!!」
人々は喜びました。
「女王様だ!!」
人々は涙を流しました。
「妹姫が倒れたからだ!」
人々は喜びました。
「妹姫が倒れたからだ!」
人々は笑いました。
けれど女王は喜びません。
けれど女王は笑いません。
騎士の腕の中で目を閉じる妹姫を見て、女王は涙を流しました。
「わたくしの可愛い妹。わたくしの優しい妹。あなただけは分かっていたのね、わたくしがもう耐えられないことを。あなただけは気が付いていたのね、わたくしがもう限界だったことを」
人々は涙を流す女王を見て驚きました。
人々は涙を流す騎士を見て驚きました。
「ごめんなさい、わたくしの愛しい妹。わたくしがいなければあなたは動けない。わたくしがいなければあなたは生きられない。それなのに、あなたはわたくしを眠らせてくれたのね。誰もがわたくしに動くことを望んだのに、あなただけは、わたくしが休むことを望んでくれたのね」
人々は倒れた妹姫を見て驚きました。
人々は倒れた妹姫を見ていられず目を逸らしました。
人々は今、やっと知りました。
妹姫は人々が頼る女王をただひとり心配していたのです。
妹姫は人々を守る女王をただひとり守っていたのです。
妹姫は人々の中でただひとり、自分の力では動けなかったのです。




