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素振り代わりに雑魚狩りしてた俺、美少女配信者をうっかり助けて死ぬほどバズる  作者: 斧名田マニマニ


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2/9

美少女配信者を助けたら生配信に映ってた

駆けつけたダンジョンの奥には、信じられない光景があった。


巨大なモンスターに襲われている女の子。

その顔を見た瞬間、思わず息を呑んだ。


花園はなぞのサナ。


登録者数二百万を超える、業界トップの美少女配信者。

同接五万超えが当たり前、『サーニャ』の愛称で呼ばれる存在だ。


花園サナは護衛ドローンを破壊され、壁際まで追い詰められていた。

逃げ場は、どこにもない。


《うそうそ、やばいって!》

《なんで上層にキングオーガ亜種!?》

《誰か通報して! サーニャが殺されちゃう……!!》


投影機材によって、彼女の周囲にリアルタイムでコメントが浮かぶ。

視聴者たちの焦りも当然だ。


花園サナが対峙しているのは、S級モンスターのキングオーガ。

しかも、よりによって亜種だった。


亜種はでかい。

通常個体の2倍はある。

動きも速い。


さらに、攻撃には属性まで乗ってくる。

身に纏ったオーラを見る限り、このキングオーガは炎属性の持ち主だ。


……護衛ドローンじゃ、話にならない。


とんでもないことになった。

深層でもめったに見ない怪物が出現するなんて。


「みんな、どうしよ……。私、ここで死ぬかも。でも、せめてカメラだけは……。この記録が、きっと誰かの役に立つから……!」


声を震わせながらも、花園サナが勝ち気に微笑む。

かわいいだけじゃなく、めちゃくちゃ肝が据わっている。


そんな姿を見せられて、放っておけるわけがなかった。


俺がキングオーガを倒せるとは思えない。


でも、彼女が逃げる隙を作るくらいならひょっとしたら……。


剣を構え、飛び出す。


「キングオーガ、おまえの相手は俺だ!」

『グオオオオ……』


キングオーガの意識がこちらにそれる。


いいぞ。


ドンッ!


拳が床を叩き割り、炎が弾けた。

焼けた石が飛び、頬に当たって熱い。

熱風が吹き荒れる。


速い。

けど、見える。


一撃目をかわす。


「うそ……あの速さ、避けた……!?」


花園サナが息を呑む。


すぐに次の攻撃がくる。

また炎の渦。

それもギリでかわした。


「……っぶな!」


鼓動が早くなるのに、目だけは妙に冷静だった。

炎の線がゆっくり見える。

なんなら、遅いと感じるくらいだ。


いや、そんなバカな。

雑魚モンスターばっか斬ってた俺が?

でも、見える。

本当に。

炎の渦の中でも、キングオーガの動きがはっきりわかる。


……あれ? これ、もしかして。

雑魚ばっか斬ってたら、いつの間にか強くなってたパターン?


『グオオオッッッ!!』


キングオーガが咆哮し、拳を振り上げた。

炎が爆ぜる。

その瞬間、身体が勝手に動いた。


「これも避けれる……!」


熱気を切り裂きながら、踏み込む。


敵の動きが目に見えて荒くなってきた。

炎で筋肉を焼かれて、力のコントロールが効かなくなってるんだ。


……待てよ。

勝ち筋、見えたかも。


オーガを含むオーク系の敵は必ず左足に重心をかける。

雑魚狩りで嫌というほど見てきた癖だ。


熱で動きが荒くなった今なら、あの癖が致命傷になる。

二つの知識が、ここで繋がる。


次の瞬間、奴は必ず左足のバランスを崩す。

おろしたてのこの剣なら、こいつの肉でも断てる。


「そこだ!」


ザシュッッ。


鋼みたいな皮膚を裂く手応え。

熱気の中で、赤い光が弾け飛ぶ。


キングオーガが咆哮した。

炎の腕が振り下ろされる。

でも遅い。


「見えてるっての!」


身をひねりながら、渾身の一撃を叩き込む。


ズバァッ!


巨体の右腕が宙を舞い、炎が散った。

一拍遅れて、地面が爆ぜるように揺れる。


《やば、今の見た!?》

《誰この人、すごすぎる!》

《今、トレンド確定しただろ……》

《コメント欄、止まんねぇ!》


「これで、終わりだ……!」


動きが止まった巨体に、渾身の一撃を叩き込む。


ザンッッ……!!


鈍い衝撃が腕を通して伝わり、足元の床石が砕けた。

巨体がのけぞり、赤い亀裂が全身を走る。


一拍遅れて爆ぜた。


ドオオオオォン――。


炎の中、キングオーガが崩れ落ちる。

巨体は灰になりながら、空気に溶けていった。


熱風が止み、静寂が戻る。


花園サナが呆然としたまま、ぺたんと座り込む。


「……た、助かった……。嘘みたい……。ありがとう。君は命の恩人だよ……!」


涙で濡れた瞳が、まっすぐ俺を見ていた。


「そんな大げさな」


俺は苦笑して剣を納める。

ずっと素振りしてた甲斐が、ようやくあった気がした。


でも、そこで気づいた。


花園サナの上に、怒涛の勢いで流れ続けるコメント欄。


並んだ言葉に、息が止まる。


……いや、まさか。

これ――俺、生配信に映ってる?

※カクヨムで十数話分を先行公開しています

続きが気になると思っていただけましたら、そちらもどうぞご活用ください~!

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