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素振り代わりに雑魚狩りしてた俺、美少女配信者をうっかり助けて死ぬほどバズる  作者: 斧名田マニマニ


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1/9

素振り1万回、雑魚狩り中に人生が変わった

スライムを斬る。

ズバッ。

手応えはほとんどなし。

経験値も微量。

でも、これでいい。


俺、古津川(こつがわ)陸のユニークスキルは剣術。

……地味だ。


魔法全盛のこの時代、剣術なんて外れ扱いだ。

ひたすら素振りをして、コツコツと経験値を上げるしかないからだ。

派手さゼロ。地味さMAX。

そりゃ人気がないわけだ。


けど俺は、コツコツやるのが好きだった。

努力の才能だけはある……たぶん。


そんなわけで、今日もダンジョンに潜って、素振り代わりの雑魚モンスター狩りに精を出している。

剣術経験値はちゃんと入るし、たまにレアドロップもある。

千回に一度くらい。

だけど、その一度がたまらない。


レアドロップがあったときは、その素材で剣を作ることにしている。

癖の強い変な剣ができることがほとんどだが、それもまた楽しい。

使いこなせた瞬間、「俺、天才か?」ってなる。

その興奮を糧に、また素振りに戻るってわけだ。


「よし、そろそろ新しい剣のほうも試してみるか!」


脇に差していたほうの剣に持ち替え、目の前のスライムを一刀両断。


ズバァッ。


……おお、手応えがいい。

斬撃の跡が、ほのかに青く光っていた。


「でも軌道が少し速いな。えっと――」


ポケットからボロボロの手帳を取り出し、すかさずメモ。


そのとき、背後から嘲るような笑い声が響いた。


「見ろよ、コツコツくんだ! まだ紙のメモ帳とか使ってんのかよ!」


振り向けば、顔見知りのFランク探索者たちがいた。

今日も安定の煽りスタートである。


「古臭さもここまでくると芸術だな〜!」

「剣を使ってる時点でやばいって。時代劇かよ!」

「スマホもWi-Fiも知らなそう!」


おいおい、俺はどこのじいちゃんだ。


スマホももちろん持ってるが、手で書き込んだほうが断然記憶に定着しやすい。

だから、この方法をとってるんだけど、彼らには理解できないのだろう。


まあ、いいや。

気にせず次のスライムに向かう。


ズバッ!!


目の前のスライムが真っ二つになる。

この剣、やっぱり切れ味が抜群だ。


ドロップアイテムを拾うと、おっ、中レア素材だ。

運がいい。

素材屋に持ち込めば、そこそこの小遣いになりそうだ。


「《ミスリルスライム核》じゃないか!? 初めて見たぞ……!!」

「どうやってドロップさせたんだよ!?」

「教えてくれよ、コツコツくん!!」


Fランク探索者たちが急に距離感ゼロですり寄ってくる。

さっきまでの態度はどこいったんだよ。

若干呆れたが、別に隠しておくような情報でもない。


「攻撃に水属性の付与を混ぜると、たまに落ちるよ」

「マジか! 神情報じゃん! さっそくスライム狩りしに行こうぜ!」

「じゃあな、コツコツくん。やっぱり持つべきものは、コツコツ情報収集する底辺探索者だぜ!」


笑いながら去っていくFランク探索者たち。


肩をすくめて見送る。


見下されているのはもちろんわかっている。

それでも俺は、努力を笑う人間より、努力を笑われる側でいたい。


彼らからすれば、その真面目さがくだらなく映るのだろう。

少しずつできることが増えていく感覚、楽しいけどなあ。

コツコツを嫌う彼らのような人たちがその喜びを知らないなんて、もったいないなとさえ思う。


「さてと……そろそろゲートが出現する時間か」


ダンジョンには、まれにゲートと呼ばれる特別な入口が現れる。

普通の探索者は運任せで出くわすのを待つが、俺は違う。


雑魚狩りを続けるうちに、ゲートの出現する時間帯や場所の傾向が少しずつ見えてきたのだ。


「前回調べたとき、気になったことがあったんだよな」


なんとなく、今日はいつもと違う流れが来る気がする。

そういうときは、ゲートを通じて特別なレアモンスターが現れやすい。


ずっと素振りばっかりしてきた。

そろそろ、実戦でどれくらい通じるのか試してみたい。


その瞬間、空気がぐにゃりと歪んだ。


やっぱり、来た。


明らかにいつものゲート解放時とは違う。

周辺の空気が異様に重い。

肌がひりつくような圧が混じっている。


その直後――。


「きゃあああっ!! たすけてーーー!!」


女の子の悲鳴だ。


金属が砕ける音。

薄暗いダンジョンの奥で、青白い光が揺れた。


間違いない、誰かがやばい。


俺は剣を握り直して駆け出した。

※カクヨムで十数話分を先行公開しています

続きが気になると思っていただけましたら、そちらもどうぞご活用ください~!

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