第十二話
108回目の満月の日、紅の瞳を不敵に輝かせた少女は月光下で笑っていた。
身に纏うのは紺の着物ではない。
動きやすい服が欲しいと巴恵に命じられた花菱が、庭のある元私立高校の校舎から見つけてきた制服だった。セーラー服と呼ばれる類のものだ。赤い襟と袖口には、鮮やかな青のラインが一本入っていた。胸元には青いスカーフ、そして衿と同じ色をした赤いスカートがひらりと翻った。
朱色のセーラー服は、紺の和服よりずっと巴恵に似合っているように思われた。
バッサリと切ってしまった前髪が気の強そうな眉の上で揺れる。
「分かる? うちはずっとお祭りに参加したかったんよ?」
遠くに響くのは、祭囃子の太鼓の音。
「ここにおっても参加できないんなら、うちは今日限り、この庭を出る」
巴恵を守る彼が戦う時に奏でる、そんなお祭りの遠い音。
きらりと紅の目を輝かせて、巴恵は問う。
「文句、ある?」
「はいはいはい! おれ反対! お嬢が戦うの、反対!」
花菱少年の提案は軽く無視され、隣の雪輪は困ったように肩をすくめた。
少女は銃を手にとった。
すべてが守られていた箱庭はもういらない。大切な人と、再び出会うため。
「行こか」
白髪の少年と、緑の髪の少女を従えて。
再び会えたら、必ず伝えたい言葉があります。
やさしい嘘でずっと自分を守ってくれていたあの人へ。
「これまで守ってくれてありがとう。
でも、これからは肩を並べて歩いてもいいですか?」
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