一蹴 感嘆符
「ラセラ、ウンコ」
「シノブ、ウンコ」
「違う、ラセラ、ウンコ」
「違う、シノブ、ウンコ」
「違う、ラセラ、ウンコ、漏れる」
「違う、シノブ、ウンコ、漏れてる」
「違う、ラセラ、ウンコ、したい」
「違う、シノブ、ウンコ、してる」
「違う、ラセラ、ウンコ、漏らした」
「え、汚! マジ⁉」
シノブが変な子が来たなあと少し遊んでいたら、どうやらその子が脱糞してしまったようだ。これは半分くらいシノブにも非があるのではないだろうか。と思うシノブだが、しかし中学生にまでなって脱糞してしまうという方もどうかしている気もする。
「あー、まあ気にしないで。誰でも通る道だから。私はとっくに通り過ぎたけど」
「シノブ、意地悪」
「シノブ、神様」
「ラセラ、虐められた」
「ラセラ、脱糞王」
「シノブ、嫌い」
「ラセラ、臭い」
シノブは普段良い子なのだが、何故だかこのラセラという子は喋り方が面白くて嗜虐心が高まる。人は皆何かを嗜虐したい生き物なのだ。そしてこの子はそこまで効いていないようなので、シノブも弄り甲斐がある。次の日に自殺でもされたら寝覚めが悪くなるため、シノブも死なない程度に相手を虐めるのだ。人は元来虐め好きなのだから。
「お、来たなラセラ。て、その子は?」
「ラセラ、虐めた」
「ラセラ、漏らした」
「そうか。ラセラがウンコ漏らしたから、遊んでくれていたんだな」
グリーンアップルは独自の解釈をするが、大体事実に違いないから困る。
「シノブ、悪い子」
「シノブ、神様」
「そうかい神様、ありがとな」
グリーンアップルはシノブの喉を撫でる。シノブは猫ではないのに、何故だか気持ち良く感じてしまう。
「シノブ、狡い」
「シノブ、可愛い」
「いやあ、両手に花だな。はっは」
グリーンアップルは上機嫌に笑う。シノブも褒められて不思議と嬉しい。何故だろうか。このグリーンアップルという男からは、妙に色っぽいフェロモンを感じる。シノブの隠していた感情が悲鳴を上げているようだ。しかし、彼女には実はもう彼氏がいるのだ。
「さて、シノブちゃん。選べ」
急に乱暴な言い方になり、シノブは少し動揺する。
「今死ぬか後で死ぬか」
「ふんふーん」
ヴァイオレット・エヴァーロッテンマイヤーさんは鼻歌を鼻ずさみながら春麗邸の庭を箒で掃除する。今はウラララ‼ は授業を受けている頃合いだろうか。ヴァイオレット・エヴァーロッテンマイヤーさんはウラララ‼ に勉強も教えている。天然気味の彼女だが、基本的に優秀なのだ。
「よう、ヴァイオレット・フルバースト」
「ふる、て、貴男達は……?」
「俺はグリーンアップル博士。こっちは相棒のラセラ」
ポケットモンスターみたいな自己紹介だが、この二人は何者だろうか。
「お前の身体見せてくれ」
「へ、変態⁉」
「違う。お前の身体を調べたいんだ」
「いや、変態じゃないですか!」
「違う。お前の身体に興味があるんだ」
「先程から同じこと繰り返してません⁉」
身の危険を感じたヴァイオレット・エヴァーロッテンマイヤーさんは少し距離を取る。この二人はなかなかヤバそうだ。放っておくと犯されてしまいそうだ。レイプは良くない。強姦は良くない。
「お前はこのラセラと同じ力を持っている」
「同じ力?」
「見せてやれ、ラセラ」
「イエス、グリーンアップル」
ラセラはヴァイオレット・エヴァーロッテンマイヤーさんに手を向け、
ヴァイオレット・エヴァーロッテンマイヤーさんの衣服は爆ぜた。
「え」
「つまり、こういうことだ」
「いや、私が全裸になっただけですが」
「そう、お前にもこういう力があるだろ?」
「ありませんが」
「え」
「あったら使いまくりますが。ストリップ祭りじゃないですか」
「えー、話と違う」
「大きい、エロい」
ラセラは自身のと見比べてしまう。
「ラセラちゃんもすぐ大きくなるよ」
「優しい、好き」
「何好きになってんだよ、ラセラ⁉」
ラセラはヴァイオレット・エヴァーロッテンマイヤーさんに喉を撫でられ、猫のように甘えてしまう。一瞬で懐柔されてしまった。何という懐柔8号だろうか。
「これが、こいつの能力⁉」
「いえ、多分違うかと」
「優しい、好き」
「おう、よしよし」
「気持ち良い、大好き」
「大好きまで出ちゃったか! くそ、仕方ない! 今日の所は諦めるしかないな!」
「明日も来るんですか?」
「いや、てか、君本当に何の力もないの?」
「勉強や家事は得意ですが」
「いや、そういうのじゃないんだ」
グリーンアップルはラセラをヴァイオレット・エヴァーロッテンマイヤーさんから引き離し、帰路に就く。ヴァイオレット・エヴァーロッテンマイヤーさんは一体彼らは何がしたかったのだろうか、と考え込む。しかし彼ら自身も、一体何がしたかったのかよく分からなくなってきている。しかし、まあ人生というものは往々にしてそういうものだろう。疑問符と疑問符のぶつかり合いからしか、感嘆符は産まれないのだから。