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ひだまりの家
春の午後、
千春はふらりと「ひだまりの家」と書かれた看板を見つけた。
古びた木造建築は暖かな陽光に包まれていて、
外からは子供たちの笑い声が聞こえてくる。
千春はその場の
雰囲気に惹かれて門をくぐる。
「こんに ちは!」と元気な声で
迎えられた。小さな女の子がにっこり笑いながら、「ひだまりさん
ですよね?」と聞いた。
千春は混乱しながらも、うなずいた。
「うちのヒナ、
遊んでくれてありがとう!」 母親 ら
しき女
性が礼儀正
しく頭を下げる。千
春は少し戸
惑いつつもそ の暖かな
空気に流され、子供
たちと楽しい時
間を過ごす。
夕方になり、
家を出るころ。千
春はふと立て
看板の文字をもう一
度見た。
「ひだま
りの家」
………………………………看板に別の文字が浮かび上がってきた。
「非だ、 まりの家」